◆ 第一話 ◆

まじょよったりはひがしより
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魔女来たりて
 
平太  「なんにしても、助かったよ、謎のにいちゃん。」

サヤ  「うん。れーさんありがとね。」

WC  と、礼が真面目な顔で。

  「まち。こっからや。」

平太  「え?」

サヤ  「なにが?」

 「相手の出方次第じゃ、ケツまくっても助からんかも知れんな。」

平太  「へ?」

 「ええか。自分ら、首が龍、体は猿の化け物、どうにかした記憶あらへんか?」

平太  「ああ、あれだろ、公園でだろ?」

サヤ  「比嘉ちゃんがおそわれたとき?」

 「あれな、俺の式神やねん。」

平太  「うん。そんな気はした。」

サヤ  「え〜!?そなの?」

 「魔女の一人を監視するためにつけとったんけどな。…まんまと狂わされて、駆けつけたときにはボンたちに消されとった。」

平太  「狂わされた?」

サヤ  「なるほど〜。魔女にか〜。」

 「たぶんな。」

サヤ  「ごめんね〜。高かった?」

 「まー値段は良いねん。弁償してもらうし。」

平太   「なんだかよくわからないけど…」

 「つまりは。俺の式を狂わせて、あんたたちに退治させるきっかけを作った女。それが、最後の魔女や。」

平太  「俺たちもいいように利用されてる?」

 「そやな。」

サヤ  「じゃぁ、最後の魔女はここに来るかなぁ?」

 「自分のライバルを、確実に殺すために、ようさん嘘をでっち上げて、結局俺も駆り出されてしもた。
さて、逃げ出したいとこやが、そうもいかんな。生きて帰れるとええねんけど。…無理やろな。」

WC  さく…
森の下生えを踏みしめる音がする。

サヤ  びくっ!?

WC  誰かが、歩いてくる。

???  「くふ…」

平太   「…」

???  「くふふふふ…」

WC  さくさくさく…

サヤ  「きちゃったね〜…」

WC  森の入り口から、おかっぱ頭を揺らして、小柄な人影がやってくる。

 「こいつか…」

WC  東から。 魔女がやってくる。

平太  「…」

WC  最後の魔女、比嘉由良は、広場の入り口に立ち止まり、辺りを見渡す。

比嘉  「めでたしめでたし。  
4人の魔女のワルツは終わり。
ここに一人が立っている。
世界が変わる。

くふ。くふふふふ…」

WC  謳うように。

比嘉  「世界を変える力が。  
私のもとに、やってきた。 
こんなに嬉しいことはない。
ひとりは首をはねられた。
ひとりは腹を切り裂かれ。 
ひとりは胸を貫かれ。 
最後に立つのは魔女の女王。

今日は気分が良いわ。生かしておいて上げましょう。

さようなら。

くふ。  くふふふふふ。」

平太  「…」

比嘉  「くふふふふふふふひふふふふふふ!!!!!」

WC  哄笑とともに、周囲が陽炎のようにゆがむ。
2人の意識が遠ざかる。
そして。
全てが。
闇に。
 
WC  はっと気がつくと、空に星がまたたいているのが目に入る。

サヤ  「あれ????? …生きてる…みたい。へーたんは!?」

平太  「…比嘉のやつ…」

  「どうやら、そうやね。なんとまあ、運の良いこっちゃ。」

サヤ  「あ〜〜、皆さん起きてくれてよかった。」

平太  「なんなんだよ! 何がなんだかさっぱりわからねーよ!」

サヤ  「でも、とっても嫌な感じ…。比嘉ちゃん、ほっといて大丈夫かな?」

平太  「魔女がなんだよ! 田口はどこだよ!」

 「ボン、自分の力が足らんことにキレんなや。」

平太  「こんな力あっても、なにもできねーじゃん…」

 「でけへんな。覚悟が足らんかった。
…しゃあないやろ、ボンは普通の、日のあたる場所で生きてきたんや。まあ、忘れて戻り。」

平太  「…」

 「あの魔女は、俺ら大人がどうにかしとくさかい。」

平太  「…あんたは結局なんのタメに戦ってるんだ?」

 「見て分からんか? なら、訊いても分からん。」

平太  「台風が上陸しないための、なにかなのか?」

 「まー、正義の味方や。おっとこの子やさかいな。」

平太  「…おれにもやらせてくれよ…」

 「やめとき。今回は運が良かった。次は死ぬで。」

平太  「こっちはいい加減何もできないことに腹が立ってるんだよ!」

 「…あー、気持ちはわからんでもないけどな。捨てることになるモンも多いで。…やめとき。」

平太  「俺は、いちど 舞台 期待されたエースピッチャーであったへーたは、事故で右腕を失った。 から引きずりおろされた。でも、今回はちがうだろ! まだ負けてねーんだよ!」

 「ままごとの冒険なら ネトゲオンラインゲームの別称。でも何でもええやろ。あれは楽でええで。」 

平太
  「そんなもんじゃねー! 
…チャンスをくれよ…礼さん…」

 「知らんがな。」

平太  「…」

 「誰かに『くれ』いうて貰えるチャンスなんぞ、ゴミやろ?」

サヤ  「厳しいね〜。」

 「うん? …ま、大人やし。…これでもね。」

サヤ  「うん。そか。」

 「姉さんは、わかっとるよな?」

サヤ  「ん?なにが?」

 「…そういうタイプが、いっちゃんおそろしい、っちゅうねん。」

サヤ  「え〜っ? そんなことないよ。   
…でも、私がこの力を使う理由はとっても単純だから。」

 「まあ、手ぇの届く範囲でお願いしときますわ。」

サヤ  「そうしときます。」

 「ねえさん退治せえゆう命令もらうんは勘弁やで。」

サヤ  「うぅぅぅ。それは私も勘弁です。」

 「はは。じゃあな、ボン。ねえさんも。」

平太  「…」

WC  と、礼は背を向けて、すたすたと森の出口に向かってゆく。

サヤ  「どする?へーたん。私はほっとけないよ。」

平太  「…俺は…もうちょっと、考えを整理したい…」

サヤ  「ね〜ね〜、れーさん。期限付きでちょっと待ってくれる〜!?」

 「んお!? なんやの、もう。ちょおかっこいいお別れシーンが台無しや!」

サヤ  「今日の今日じゃさぁ、私もお家のことがあるし…それに晩御飯ご馳走する約束だったし。…ね? 」

 「あー、…ったく、かなんなぁ。…ええよ、ご馳走されたる。」

サヤ  「うん。されたって♪」

 「おれ、事後処理と、本部への報告したいねん。やから、夜、お邪魔するわ。…ええ?」

サヤ  「はーい。了解しました。」

 「俺の舌は安ぅないで! 覚悟しとき!」

サヤ  「あっ、私のこと料理ベタなダメ主婦だとおもってるでしょ〜!」

 「不良主婦以外のなんやっちゅうねん!」

サヤ  「え〜、ちゃんと家事もやってるよ。たぶん。…ま、いいや。また後でね。」

 「 犬神 「犬神」という言葉には、上述の『蟲毒』に近い呪術を指す場合と、狼やそれに近い血筋の犬を神格化した存在を指す場合がある。
ここでは、後者を意味している。
つれて魔女退治する主婦なんぞ信用できるかい!」

WC  と、礼は去ってゆく。

サヤ  「ひどいな〜。」
ちなみに転がっていたらしい田口さんは?

WC  ダンボールハウスの中で…魔法が解けたように、城は、ただのダンボールハウスになっているのだが…
その中に、横たわっている。

サヤ  「あっ、へーたん!!」

平太  「ん?」

サヤ  「この子かな??」

平太  「…たぶんそうかな?」

WC  衰弱しているようで、意識はありません。ただ、へーたの高校の制服を着ています。

平太  「とりあえず、病院だね。」

サヤ  「たぶん、美紀ちゃんだよね。うん。それがいい。」

WC  手のひらに、枯れた夕顔のツルを握り締めて。

サヤ  「救急車呼ぶね〜。」

平太  「うん。」

WC  と、救急車とかの話はまあ、それなりにやった、ということで。次の日。でいいです?

平太  いいよー。

サヤ  OK。
 
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