◆ 第一話 ◆

まじょよったりはひがしより
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魔女来たりて
 
WC  繁華街にある、お好み焼き屋「天神」。

【天神】

  「あ、すんませーん。」

サヤ  「こんばんは〜。」

平太  「…」

 「ねえさん、こっちです。…まー、とりあえず入って食いましょ。」

サヤ  「は〜い。」

 「食い放題で、2時間しか入れんのです。」

サヤ  「それじゃ、急がなきゃ。」

 「味は保障しますよって。じゃ、3名ですー。」

WC  と、席につき。

サヤ  「へーたん、おこのみ焼きとかだいじょぶだったっけ?」

平太  「ん、平気だよ、アレルギーもなく至って健康体。」

 「ええこっちゃ。」

サヤ  「うん。健康が一番。」

 「人生その方がたのしいね。」

サヤ  「じゃ〜、じゃんじゃん食べないと!」

平太  「いただきます。」

 「さて、そんじゃ、ご馳走します。」

WC  と、見事なヘラ捌きでどんどん焼いてゆく。

サヤ  「わーい。関西の人に焼いてもらうの初めてだ〜。」

 「あはは。なんも変わりませんよ。」

サヤ  「気分。」

 「なるほど。含蓄やね。…ボンも食っとき。ほれ、イカ玉。」

平太  「…で、なんの集まりなの?これ。」

 「ん?…飯。…ですよね?」

サヤ  「うん。そう。」

平太  「…比嘉の…魔女の方はどうなったの?」

 「…あー、大きな声では言えへんのやけど…」

WC  と、言う声も、喧騒にまぎれて聞き取りにくい。木を隠すなら森の中。礼なりの配慮だったのだろう。

 「うちの上層部のほうで、特別対策本部組んで、メッサツする方向でー。」

サヤ  「うわ〜、そこまで大きな話になってるんだ〜。」

 「あーうん、これ秘密な。あの魔女、台風に例えたけど、あれむしろ、例えいうより、事実に近いねん。
魔女ってのは、自然現象と、情報の混沌、人の情念イロイロ凝って形を成した、この時代の澱が凝縮されたようなモンでな。   
革命とか、天変とか、とにかくエゲツない物事の「きっかけ」になんねんよ。」

サヤ  「じゃあ、まだ手を出してはいないけど、そのうち動き出すんだね。」

 「そやね。そのために生まれた存在やし。…やから、滅殺。」

平太  「…」

 「まあ、そう簡単な話でもないねんけど。そこはな、なんとかかんとか。蛇の道は蛇。
皆さんには心配かけへんように片付けたるさかい、安心したって下さい。」

サヤ  「ん〜、そんなにたくさんの人達が対策組んでやるんじゃ、私たちみたいな半端者は足手まといかな?」

 「そやね。」

平太  「…」

 「てか、プロ以外にいてほしない。成功率下げる。苦しむ人が増える。」

平太  「…礼さんはおれに、力をもってどのくらいかきいたよね?」

 「うん?」

平太  「…礼さんはどのくらいなのさ?」

 「15年、てとこやねー。」

平太  「ふーん…15年でプロと…」

 「まあ、ひよっこやけど。」

サヤ  「そこは、年数の問題じゃない気もするけど…。
私だって、それくらいの期間はリキと一緒にいるし。でも、れーさんみたいに上手くはたたかえないよ。」

 「どうやろか…ほんまに俺がうまく立ち回れてたら、最後の魔女も止められたかも知れん。
…まだまだや。戦いの技術だけでプロ名乗れんなら、こんな楽なことない。ぜんぶ。足らんもんだらけやね。
…ねえさんは、ええとおもうよ。ねえさんは、あくまで大事な人の幸せ守る。そのプロや。過不足ない。それが一番ええ。」

サヤ  「うん。それはそう思う。…でも、ほっといたら大事な人にも影響があることわかってて、自分にもできることあったら。ほっとけなくなっちゃう。」

 「そらなあ。でも、ねえさん、エアコンも…」

WC  と、サヤの手元を指し。

サヤ  「エアコン?」

 「割り箸も、使うやろ? 大勢に、みんなに悪い影響出るて分かってて。当然、ねえさんの大事な人にもや。」

サヤ  「彼女も台風と同じ?ね。」

 「そうや。それはそれ。線ひかな。身の丈に合わんことするのは、醜い。周りの者を不幸にする。…そうおもうで。」

サヤ  「うぅぅ。そう言われてしまうと。返す言葉もございませんが。でも。理屈じゃないんだよね〜。 
今回はこれだけ美紀ちゃんとか比嘉ちゃんとかに関わってきちゃったし。へーたんもまきこんじゃったし…。私ももっとしっかりしなきゃな、って思うよ。」

平太  「…けっきょく、卵が先か鶏が先かの話なんじゃない、礼さんが言ってるのは。」

 「ん?」

平太  「不幸が先で行動が後か、行動したから不幸が起きるのか…」

 「まぁな。」

平太  「俺たちが動いたから、不幸になるのか、俺たちが動いたから大切な人が助かるのか…それは結局わからない…
おれとさやねぇが足手まといになるのかだって、まだわからないんだよ。」

サヤ  「うん。そだね。」

平太  「もしかしたら、比嘉に一番近い俺たちの力が必要になる時がくるかもよ。
…というのは、こじつけなんだけどね…足引っ張るのだってわかってる…でも、最後まで関わらせてくれないかな。」

 「ボン、ええか?」

平太  「ん?」

 「俺は、『やめといた方がええ』と言った。『やめなアカン、そやなかったら、いてまうで!』とも言った。
しかしな、しょっせん口だけや。お前が関わりたいと願い、関わるための努力を惜しまず。
そして、正しく覚悟を持ち続けるなら…だれがお前を止められる?」

平太  「…」

 「気ぃつけ。先輩からの忠告や。油断すんな。タカくくるな。
常に、自分とその大事なモンが危険にさらされてる意識もて。それが『覚悟』や。」

平太  「…その言葉、忘れないようにするよ。」

 「あとは。好きにせえ。」

平太  「…うん。」
じゃあ、お好み焼き食う。

 「ととと。やばいな。」

サヤ  「こげちゃう!?」

 「もう時間ないやん。」

サヤ  「そっちか〜!」

 「元とらな。なっがい話しとったからね。」

サヤ  「へーたん、もととって!! …私はあきらめたよぅ…。」

 「ねえさん!」

平太  「うし!まかしとき!」

 「あきらめたらあかん! あきらめたらそれでしまいや!」

サヤ  「い〜の。そこはそれ。線引きしなきゃ。ってだれかがいってたもん。」

 「希望捨てたらアカン!っておれかーい!」

平太  「(笑)」

 「ねえさんのそゆとこ嫌いや。」

サヤ  「え〜。じゃぁ、今度おいしいもんじゃのお店つれてってあげるから。」

 「おお、ええね。俺の舌は安ぅないで!」

WC  とまあ、そんなこんなで食事も終わり。礼は…

 「また、一緒に飯でも食えるとええね。」

WC  と笑いながら去っていった。

平太  なにその 死亡フラグ ゲーム用語。何らかの選択肢によって、将来的にキャラクターが死亡することが確定したとき、プログラム上に、それを示す仮想的な『旗』が立つ。
これを俗に「死亡フラグ」と言う。ここではもちろん冗談として言っている。
(笑)。

WC  そりゃ立つよ。先輩キャラは良い事言ったあとは 死兆星 北斗七星の添え星で、死の迫った人間だけに見えるという設定の星。
古典マンガ『北斗の拳』からの出典。
見るもん。

サヤ  たしかに。

平太  こえー(笑)。
あとがき

新システム「マトリクス・ゼロ」のファーストリプレイ「まじょよったりはひがしより」如何でしたでしょうか?
この物語は、「マトリクス・ゼロ」システム(以下M0)のテストプレイも兼ねています。
そのため、WCはゲームバランスを測りきれておらず、プレイヤーはシステムを把握しきっていない状態です。
そこで、なにが起きるかと言うと…はいそうです。負けるんですね、主人公が。

拙サイトで公開中のリプレイ『ボロ靴のマーチ』を読んでいただいている方はご存知かと思うのですが、うちのゲームでは、主人公だって負けます。
知恵と力と運が足りなければ、さっくり負けます。
しかし逆に、イベント的な、いわゆる『負け戦闘』でも、知恵と力と運と気合で勝ってしまう事もあります。
まあ、そんな手加減のない感じがうちの強みなのかなとも思ってはいるんですが、しかし、「まじょよったり…」のようなシビアな世界観では『敗北』=『死』なわけで…。
これが、全てプレイヤーの責任ならば死もまた物語、と言うことで、それで終了でも容認するのですが、『テストプレイ中』の看板がかかる限り、どうにも救済措置を用意せざるをえないことになります。
そして、WC的には最悪の展開だと思っている「NPCが敵を倒す」状態が出来てしまうんですね。
今回の物語の結末は、用意しておいたいくつかの結末の中では最悪の部類に入る結末です。
このツケを払うために、WCとプレイヤー達、そして、へーたとサヤは、次の冒険に挑むことになります。
もう少しだけ続く2人の物語に、お付き合い頂けたなら幸いです。

では次回、第2話「うつつにうつるはまぼろしの」で、お会いしましょう!
 
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