【厨房】
平太
一番最初に開けようとしたところ。
WC
その鉄扉には、確かに、麦穂の木札がぶら下がっている。
はじめに見たとき感じた違和感は、これだったのだろう。吐月館にはなかったから。
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平太
なるほど。
サヤ
「さすが!」
平太
「へへ。じゃあ、開けるよ。」
WC
うっかりハチベエ
言わずと知れた大衆娯楽時代劇「水戸黄門」の登場人物。
第2部〜第29部まで出演のコメディ要員。
現行シリーズ(第39部)における「おけらの新助」の役どころ。
みたいだな、食い気で大手柄って。
平太
なぜそういうイメージを取り出す…。
サヤ
い〜じゃん、男の子は食いしん坊でいいのだ。
WC
がちゃり、と音を立て、鉄扉の鍵が開く。
中はたしかに、厨房のようだ。
しかし、食器類は片付けられ、むしろがらんとした印象だ。
入り口右手の壁はしきりになっており、壁際に、右側のスペースに回りこむためのくぐりがある。
また、左側の壁には、小さな木戸があり、そこには鍵の気配はない。
吐月館では物置として使われていた小部屋のあった場所だが、軽くノブを回せば、開きそうだ。
サヤ
なんだか、私の頭の中は家庭科室なんですが。
平太
じゃあ、鍵を探します。
サヤ
厨房って探すとこ多そう…。
WC
入ってすぐの細長い空間は、目に止まるものは殆どない。
流しの下の戸棚などを開ければ、鍋でもお玉でもいくらでも出てきそうではあるが。
平太
鍵は壁側とかにかかってないかな?
WC
壁にはフライ返しやヘラなどがかかっている。
サヤ
鍋とかフライパンは使ってた感じ?
WC
調理器具類は旧いものだが、丁寧に使い込まれ、最近までは使われていたことがわかる。さびも少ない。
サヤ
とりあえず戸棚は一通り開けて覗くよ。
WC
特に奇異なものはないね。
サヤ
「使い込まれてるね〜。」
WC
冷蔵庫の中にも死体はない。
サヤ
よかった。
WC
「良い台所」という印象だ。この厨房の主の人柄がにじむ。
平太
物置への扉を開けてみるね。
サヤ
うん。
WC
開くと、スコップや農具、掃除用具、ジャガイモや穀物を置いておくような、いわゆる倉庫になっている。
備え付けられた棚、木箱などに整頓して日用品が納められ、生活感がある。
平太
うーん…鍵探せるかな?
WC 整頓はされていてもそこは倉庫。
かなり物が多く、ひっくり返して虱潰しにするのでなければ、壁を一通り見るくらいが関の山か。
足元に注意しながら見渡す限り、鍵に類するものはなさそうだ。
サヤ
私は仕切りの向こう側に行ってみるよ。
WC
しきりの逆側に回ると、びっくりするほど大きな蜘蛛の巣がかけられている。
サヤ
「うわっ!」
平太
「どした?!」
サヤ
「おっきな蜘蛛の巣だよ〜。」
WC
壁の1面を覆うほどであるが、小さな蜘蛛の巣がたくさん、では決して無く、一つの巣、である。
巣の主がいないのがせめてもの幸いか。命の気配はない。
サヤ
「こんなの初めて見たよ〜。普通のクモってこんなおっきいの作れるの?」
平太
「うーん…ちっさい体ででっかい巣を張るのは疲れるから、クモとしたら大きいんじゃないかな?」
サヤ
ちょっと電子辞書で蜘蛛調べてみたりして。
WC
ないねえ。そんなサイズの蜘蛛は。
平太
クモって、自分の血液で巣を作るからね。
WC
保存則
保存則と言えば、物理の「エネルギー保存則」、化学の「質量保存の法則」である。
さらに、アインシュタインによって、エネルギー⇔質量の変換が定義されたため、上記の変換まで含めて、その総量が保持される法則を、ここでは総括的に「保存則」と言っている。
に反した蜘蛛だね。
平太
「とりあえず、この巣を取らないと調べられないね。」
サヤ
「いやぁ、それはちょっとこわすぎるよ…。」
WC
巣は、壁際に張られているので、このスペースを調べるだけなら、取らなくても平気。まあ、大掃除チックに「調べる」なら、蜘蛛の巣も下ろさないといけないが。
平太
巣には埃とかくっついてる?
WC
薄くだが、あるね。
平太
「ここのクモはいなくなっちゃったのかな。
埃が付いてたら、餌取れないよね。
蜘蛛の糸は、その表面に粘性を有しており、獲物(他の昆虫など)が糸(巣)に触れた際は、糸の粘性によって獲物を絡め取る。
糸の表面が埃に覆われていたら粘性は発揮されず、つまり餌も取れないわけである。
」
サヤ
「そうだよね。とりあえず、蜘蛛の巣は避けて調べてみようかな。」
平太
「じゃあ、一緒に探すよ。」
WC
蜘蛛の巣の前、北側の壁には炉があり、その前にはひざ掛けの載せられた揺り椅子がある。
全体的には、仕切りのこちら側は、厨房というより、炉と、テーブル、茶器などが置かれた、ダイニングのような雰囲気の部屋になっている。
揺り椅子がその雰囲気を決定しているのは否定しない。
サヤ
う〜ん。普通のクモじゃないなら、怪異の跡かもしれないんだよね。
WC
そうですね。
というか、そうとしか考えられないですね。
サヤ
だよね。ここもお香なのかな?
ぜったいクモのお化け出てくるからやりたくないんだけどな〜。
平太
一応、揺り椅子の上をチェック! なにか置いていないか。
WC
厚い毛布が置かれている。
平太
毛布をめくってみます。
WC
特に何もない。
平太
じゃあ、この椅子の主をお香で見てみようか?
やりたくなくても、やるしか無いよね。
サヤ
そうですね〜、やだけど。やりましょ〜。
平太
じゃあ、お香を椅子の付近で焚きます。
サヤ
焚きはじめで、もうはや警戒。
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