虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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長月館
 
【地下】

WC  1階西側廊下。 トの字に分かれた廊下の前にいる。 正確には左右反転のトだが。

サヤ  では、のぞいてみよう。階段があるか。

平太  うんうん。

WC  トの2画目に当たる廊下に入り、しばらく進むと、無骨な鉄の扉に行き当たる。 廊下はここで途切れている。

平太  木札があるかな?

WC  「月下美人」。

平太  お、じゃあ、鍵をもってるので開けます。

サヤ  お願いします。

WC  がちゃりと音を立て、扉は開く。

平太  「地下が月下美人か…」

サヤ  「うん。ここには扉なかったよね。吐月館は。」

平太  「うーん…そだっけ? 記憶にないや。」

WC  幅1m程度の狭い廊下は、扉のすぐ先でコンクリートが打ちっぱなしの作りにかわり、そこから、急勾配の下り階段になっている。地下に向うようだ。

平太  「先に降りるね。」

サヤ  「うん。気をつけてね。」

WC  階段は、一度踊り場を経由して折り返し、東向きになって終わる。 
階段から降りたばかりの地下は、細い廊下。湿った空気が漂った空間。 
正面に向って、幅の変わらない、細い通路がのびている。

平太  「そういえば、地下の発電室で屋敷の電気はついていたのかな?」

サヤ  「どうなんだろ?」

平太  「それ動かせば、この屋敷の電気つくかな?」

サヤ  「試してみよっか。」

平太  「そだね。」
じゃあ、道を進んでいく。T字路にぶつかったら、左へ。 そこの近くに扉があるかどうかだね。

サヤ  そだね。

WC  地下通路は、一旦右に曲がり、T字路に。
左に曲がると、すぐ先、左手の壁に鉄扉がある。 通路はまっすぐ伸びている。

平太  「たぶんここの中に発電機があるはず…」

サヤ  「入ってみよ。」

平太  「開けれるかな?」

WC  ドアノブを握ると、手にざらざらした感触がある。

平太  錆? 砂?

WC  赤黒い汚れだ。錆と砂と埃の全部だね。

平太  別の血っぽいものでなければいい(笑)。

サヤ  「へーたんティッシュ使う〜?」

平太  「ありがと。(ふきふき)」 

 
WC  ノブは軽く、回したらすぐに鉄扉は開く。
ずいぶん広い空間を、大きな機械が占領している。
機械は埃をかぶり、動いている様子はない。 

平太
  「動かせるかな…燃料入ってるかな…?」

WC  専門的な知識がなければ、動力がどこかもわかりません。そんなレベルの機械です。

サヤ  「私にはさっぱりわかんないよ…。」

平太  「…うーん…簡単にはいかないみたい…。」

サヤ  「とりあえずボタンとかない? なんか押したり、引いたり。レバーとか。」

平太  「チョークとか、ボタンとかいっぱいある(笑)。」

WC  それっぽいものは色々なところに付いている。

平太  せめて、バイクいじりとかやってればねー。

WC  だねー。

サヤ  「手当たりしだいに押したら…、ダメだよね。」

平太  「壊していいなら(笑)。」

サヤ  「う〜ん…。」

平太  「やめとこ、お金請求されてもこまるし。」

サヤ  「ONとかOFFとか書いてあればいいのにね〜。」

平太  「うーん…だね〜。」

WC  元は書いてあったのでしょうが、埃と暗さで今は見つかりませんね。

平太  とりあえず、動作させるのはあきらめて部屋の違和感を探してみよう。

WC  特には。

平太  「部屋の中もこれといってなさげだね…。」

WC  あえて言うなら、色々見回してるうちに、部屋の隅に空のガソリン缶をたくさん見つけたので、少なくとも燃料はもうない事は予想できますが。

平太  「あ、燃料がないや…これは無理だね、動かし方わかっても。」

サヤ  「そっか。この部屋では煙使ってもだめそうだしね。」

平太  「じゃあ、ここはもういいね。」

サヤ  「うん。電気つかなかったの残念だけど。次行ってみよっか。」

平太  部屋をでて、左のほうに進もう。 
 
WC  発電機の部屋幅と同じくらいの距離を進むと、すぐ再び左の壁に同じような鉄扉が。

平太  開けます。

WC  開いた鉄扉の先は、再び廊下が続いている…と錯覚してしまう程度の空間です。

平太  「あれ、ここって吐月館では貯水室だっけ?」

サヤ  「確か、そうだと思う。」

WC  ですが、気をつけてみれば、右手の「壁」と思われたのは、背の高い鉄の「箱」のようです。

平太  「…ここに水がたまるのかな?」

サヤ  「うんそうだよね、きっと。」

平太  鉄の壁を照らしてみよう。

WC  「壁」に見えた「箱」には、はしごやバルブのようなものが何箇所か付いており、箱の上部からは天井に向けて何本かのパイプが伸びています。

サヤ  はしごね〜。のぼってみるべきなのかしら。

平太  見てこようか? はしごを登ってみます。

サヤ  うーん、私が行くよ。へーたんはしご上るの大変そう。

平太  だいじょぶだいじょぶ。

WC  はしごは、2m以上の高さのある「箱」の上部まで延びています。 
では、レフレクスまたはフィールで判定してください。目標値は12。

平太  はしごがしっかりしてれば、片手でも登れるはず!

WC  してればね。

平太  へーたの場合でも同じ?

WC  してればね。

平太  じゃあ、レフレクスね。ノーマルで、11だね。ダメだった。

WC  何段か上った先で、突然、握っていた梯子の手ごたえが変わり、体がぐらりとかしぐ。 
へーたはバランスを崩し、落下する。

サヤ  「へーたん、だいじょぶ!?」

WC  使用済みマトリクスの任意の一つを使い、適当に1ダイスどうぞ。

平太  6だね。

WC  では、6点の負傷。したたかに腰を打ちつけ、へーたは打撲してしまう。

平太  「いって…。」

WC  左手が何かを握っている。

平太  「ん? はしごの足場か?」

WC  ぼろぼろに腐食しているが、その通りだ。

サヤ  「どうしたの?」

平太  「ごめん、折っちった…。」

WC  そう考えれば、この部屋は湿気が強い。

平太  「腐ってたみたい。」

サヤ  「ううん。こっちこそ、ごめんね〜。  先に気をつければよかったよ。」

平太  「いやいや(笑)。」

サヤ  「リキになめてもらう?」

平太  <治癒>で負傷はなおるね。

WC  そう。

平太  へーた的にはいやだろうが(笑)。

サヤ  「じゃ、ちょっと待ってね。リキにお願いしてみるよ。」

リキ  「ばう〜(え〜)? ばっふう(しょうがねえなあ)。ばうわう(イヤイヤだけどね)。」

平太  「…なんか言ってる?」

サヤ  「ん? だいじょぶだいじょぶ。」

リキ  「わん(手がかかる)。わわん(まったく)。…ばわん(雑魚が)。」

平太  「ん? なんかグチいってるよね?」

サヤ  8点回復。

平太  ありがと、全快したよ。

サヤ  「そんな事ないよ。ね?リキ。」

平太  「ならいいけど。」

リキ  「ばわわん(感謝カモン)! わおう(もっと)! わうわうん(崇め奉るように)!」

平太  「ありがとな、リキ。」

サヤ  「(リキぃ、あんまり調子に乗るとごはん抜きだよ〜。)」

リキ  「きゃうん!」

平太  「…でも、これで、上の方は調べられないな…あがっても危ない気がするし。」

サヤ  「そだね。う〜ん。とりあえず何か見えそうか、調べてみるよ。」

平太  「うん。」

WC  まあ、湿気と言い、設備と言い、これが貯水槽で、梯子は水質管理用の点検口に上る梯子だったことはかなり正しい感じだが。

サヤ  <星戟>してみましょう。集中集中…。

WC  静かに意識を凝らすサヤの感覚に引っかかってくる「何か」はありません。

サヤ  「う〜ん。何もなさそう。」
普通に目で見て、あからさまに変なものとかもないよね?

WC  ないね。

平太  「そか、壁周りとかに鍵が掛かってないかな?」

WC  何でこんなところに(笑)。

平太  まあ、ね(笑)。一応。
「じゃあ、出ますか。」

サヤ  「うん。そだね。」 

 
平太  道を戻って…右に曲がる道があってもさらに真っ直ぐに。

サヤ  あっ、廊下の突当たりも一応確認したいかも。

平太  そか。

サヤ  何もなければすぐ戻りましょう。

平太  そだね。

WC  では、貯水室の東を先に進みますが、廊下はすぐに行き止まります。 
再度、西に。 まっすぐ進むと、少々長めに通路が続きます。 
距離感覚の鋭い人なら、屋敷の敷地からはみ出すくらいの距離を歩いたことがわかる頃、少々ごつい作りの鉄扉に行き当たります。 通路はここまで。行き止まりに扉です。

平太  開けられるかな?

WC  不思議に滑らかな手触りのノブをひねると、鉄扉は予想外に軽い手ごたえで開きます。

平太  入ります。

サヤ  「さっきの部屋とかより、軽そうだね、扉。  
比較的最近まで人が開け閉めしてたのかな?」

平太  「あ、そうかもね。」

WC  明らかに異色を放つ空間です。 まず違うのは、足元の感触。土の感触です。

平太  「あれ? 土?」

サヤ  「ほんとだ。」

WC  広さはかなりあります。アトリエほどもあるでしょうか。

平太  周りを照らしてみる。

WC  壁や天井はあくまでコンクリですから、正直、何の用途に使ったのか見当がつきません。 
かすかに、鼻につくにおいがあります。

サヤ  物は何か置いてあるの?

WC  ライトの光の範囲には、一般的な、家具に相当するものは見えません。
先ほどまで見てきたような「装置」もなく、かといって、雑然と物がある「物置」でもない。 がらんとした空間です。

サヤ  「土かぁ。こんな所で園芸するわけないよね。もやしとか?」

平太  「ウドとかね(笑)。」

サヤ  「何のための部屋なんだろ?」

平太  臭いの正体を探してみよう。

WC  もやし。

平太  もやしが腐ってるのかよ!

サヤ  たしかにくさくなるかも。養分になりそうだけど。

平太  いやな感じの臭い? 腐臭とか…薬品臭とか…。

WC  ズバリ腐臭です。有機物の腐敗した臭い。

平太  おえ…。

WC  かすかですよ? そんなおえってほどでは。

平太  でも、イメージが悪すぎ。こんな地下で腐臭って。

サヤ  うんたしかに。

WC  臭いの正体に当たるのかわかりませんが、部屋の奥に、複雑な形の影が見えます。 
距離があり、詳細は確認できません。

サヤ  慎重に近づく。そちらに明かりを当てながら。

平太  周り気にしながらね。

WC  さて、少し近づけば、懐中電灯の光に照らされるのは… 
部屋の北西の角、北・西の壁、2面にわたって架けられた、ひと1人分位の大きさの、網です。

サヤ  網だけ? ハンモック的な感じ?

WC  良く見れば、紡錘形になった網の上に、なにやら布のようなものが乗っています。 
寝具と考えれば、まさにハンモックです。高さは、地面から1m程度。丁度良い寝心地かもしれません。 
寝ますか?

平太  ねません(笑)。布は調べるけどね。

WC  ハンモック(仮)の足元には、2帖程度の上品な絨毯が引かれ、ハンモック(仮)の陰に隠れるように、小さなテーブルが立っています。

サヤ  ハンモックをのぞく。

WC  さて、ハンモック(仮)に近づくと、そこに掛けられた布はかなり上等な絹織り物であることがわかります。
クッションなども置いてあり、間違いなくハンモックでしょう。

サヤ  何色?

WC  色は、上品なベージュや黒・ブラウンなどです。 
やはり、少し年配の女性が好むようなデザインですね。

サヤ  「まさか、ここに住んでた人がいるってことかな。」

平太  「ね…どんな人か見てみたいよね。」

サヤ  布はちょっとめくったりしなきゃですか? やっぱりホラー的には。

WC  ああ、大丈夫です。アレがくるまってる感じではないです。 めくってもアレもソレもないでしょう。

サヤ  あ〜良かった。

平太  後ろに隠れていたテーブルを調べてみるよ。

WC  高さ1m程度の丸テーブルです。天板は、半径20cm程度で、テーブルと言うよりは、足の長い椅子にも見えますが。
でも、きっとテーブルです。ハンモックに寝そべって手を伸ばせば、テーブル上に丁度手が届く感じです。

平太  引き出しとかあるかな?

WC  引き出しはないです。脚と天板だけの簡素なテーブルです。

平太  じゃあ、上になにか乗ってるかだけだね。

WC  上にも何も載ってません。

平太  あとは…この布がクサいかだな…。

WC  体臭が染み付いてたり、腐臭が漂ったりはしてないですよ。 平太の言う「クサい」は、慣用句の「キナ臭い」、つまり「あやしい」と言う意味である。
わかっていてあえて誤解する意地の悪いWC。


サヤ  その周りにはなにもない? 
つまり、その角だけ絨毯がひいてあって、あとは土?

平太  まあ、ここは過去を見るために…お香ですか?

サヤ  そですね。いちお<星戟>っておきますか。

WC  香の煙に、何本ものもやしの影が…あとウド。

サヤ  はやいはやい。

平太  あと、キノコとかね。 腐海の植物 スタジオジブリの長編アニメ映画「風の谷のナウシカ」からのネタ。
…解説になってねー。
の研究とか。

WC  姫姉さま! 「風の谷のナウシカ」で、ヒロインのナウシカが、ちびっ子達からそう呼ばれていた。
…うろ覚え。


平太  あと、土が掘り返された形跡を探してみるよ。

WC  土は、畑の土よりやや固い程度で、いたるところほり返された跡がある、とも言えます。

サヤ  土を持って帰りますか?

WC  甲子園?

平太  戦闘に負けたらもって帰ろう。

WC  帰れたらな。

平太サヤ  はい(笑)。

WC  <星戟>に集中するサヤの意識に、かすかな黒い影が。まあ、明らかに怪しいわけだが。

平太  お香の出番だね…。
「殺した魔女を埋めたとか…あったらやだね。」

WC  新しい魔女が生えてくるよ。

サヤ  「それはいやだな〜、でも、やっぱりお香使うよね。」

平太  「うん。あきらかに嫌な感じは受けるし。じゃあ、使うよ…準備はいい? 」

サヤ  「うん。」

WC  香の煙は腐臭を追いやり、過去の影を映し出す。 

 
WC  そこには、ハンモックに寝そべり、本を読む細身の女性の影が。 
その横には、ふくよかな女性が立っている。

サヤ  「(あの人(ふくよかな女性)いつも出てくるね。)」

平太  「(だな…)」

WC  2人は、静かに話しているようだ。
背の高い細身も読書に集中しているわけではないらしい。 何か知的な議論でもしているのだろうか。
険悪な雰囲気のない、それでも挑み合うような不思議な空気がある。 しばらく続いた討論の光景はやがて消える。

ふくよかな女性が、背の高い細身の女性に何か話している。 光景が変わったようだ。 
背の高い女性は壁に寄りかかり、話を聞いている。 
しばらくして、細身の女性は淡々と何かを答え、少しだけすまなさそうに頭を下げる。 
ふくよかな女性は軽く手を振って笑い、しかし、肩を落とす。 それを見た細身の女性は、少し考え込んだ後、何かを言いかけ、口ごもる。 
ふくよかな女性はそれを聞きとがめ、細身の女性に詰め寄る。 
細身の女性は答えようとしない。
しかし、しばらくのにらみ合いの後、ふくよかな女性に押し切られるように口を開き…

WC  景色が乱れる。

サヤ  何歳くらいの人?

WC  どっち?

サヤ  どっちも。

WC  ふくよかな女性は、40を超えている感じ。もしかしたら、60代を超えるかも。 
老婆と言うほどではないが、老人に近い物腰と落ち着き。 
細身の女性は30〜50の間。

平太  絵描きと細身の女性はシルエット違うよね?

WC  違いますね。髪型、体型、身長、ともに。 
絵描きの女性は、それほど背が高くなく、メリハリのある体型に見えました。髪も結い上げています。 
細身の女性は長身でスレンダー。髪も、ボリュームを感じられないショート。

平太  一応5人出てきたか。 老婆、子供、絵描き、細身、ふくよか。

サヤ  うん。 老婆=青魔女、絵描き=赤魔女でしたね。

平太  んだね。

WC  細身の女性がハンモックの上で本を広げている。考え込んでいるのか、ページを繰る手は動かない。 
やがてふわりと地に降り立ち、足と手で、土をノックする。 
過去の影は現に映る。 影に応えるように、現実でも土がぼこぼこと盛り上がり。

平太  構えよう。

WC  青白い凶相を持った「死体」が次々に起き上がってくる。
影は、3体の死体を引き連れ、外に向かおうとする。 ふと顔を上げ、2人を認めると… しなやかな腕を振り上げる!

サヤ  え〜。多いよー。

平太  多いね…。

WC  死体たちはゆっくりと向きを変え、生者に向って牙をむく…!

平太  「きたよ!」

サヤ  「うん! 了解。」

リキ  「ぐるるるる。」 
 
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