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虚空の翼
◆2話 ◆ うつつにうつるはまぼろしの |
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| 黒羽 | |||
| WC
と、ユラの影を取り巻くように、黒いノイズが空間に走る。 ノイズは少女の影を取り巻き、「翼」のような形状を形作る。 サヤ なんだなんだ?? 平太 いままでと違う?! WC ちりり…へーたの右腕がうずく。 平太 ないよ…ないのに… WC 飢餓感、だろうか。 平太 「なんだ!!? 右手が痛い!」 サヤ 「え!? だいじょぶ??」 WC なにかに飢えるように。貪婪に。ないはずの右手がうずく。 平太 右手が求めてる? <危機察知>で危険な感じする? WC ビンビンデスヨ。 平太 手を伸ばしたいけど… WC ユラを取り巻くランファの力が乱され、何色ともつかない混沌の色になってゆく。 平太 のばしたらやばいのに… サヤ 「へーたん!? あぶないよ! だいじょ〜ぶ??」 WC へーたの見えない「腕」はノイズにはじかれ、チリチリとしたしびれるような痛みをもたらす。 その痛みは、なぜか心地よく… 平太 「さやねえ、はなれて! なんか、これやばい感じがする。」 WC 黒い翼を持つ影は、2人を獲物と捉えたのか。 ノイズで色が変わり続ける翼を広げ…襲い掛かる! 平太 まじかよ! WC 戦闘続行です。敵は、貪食の魔女影「黒羽」。 平太 「気をつけてさやねぇ! まだなにかありそうだ!」 |
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| ユラの影が、不気味な姿に変化する。それに伴って平太に起こる異変。 様々な謎をはらみつつ、戦いは佳境に。 「黒羽」×1 |
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| 平太
で、色的には何色なんだ?
サヤ 全部? WC いま? <秘匿> 使用者の蓄積している属性の色、値などを、他者から隠すことのできる常駐スキル。 。 サヤ うわぁ。 平太 じゃあ、全力で行きますよ。 全力<ファイアーボール>+<反動反射>! ノイズに向かって、右手のエネルギー体を丸めて、ボールとして投げつけます。命中17。 WC 回避しない。 エネルギーの弾丸は、先ほどから「ユラ」の歌によって展開されていた障壁にあたり、かき消える。 サヤ うう、ざんねん。 平太 「最悪! さやねぇおねがい!」 サヤ 「うん、わかった!」 謎の敵「黒羽」に対し、果敢に攻撃を仕掛ける平太だが、障壁に阻まれ、ダメージを与えることはできない。 対する反撃は… WC 黒羽。ノイズが周囲を包む。 <貪婪> システムには存在しない「黒羽」の専用技。 平太の言うとおり、「裏技」である。 。 平太 それは、裏技か? WC 君たちの周囲に集う、カグヤとウィスタリアの力が乱され、吸い上げられてゆく。 2人とも、累積属性値が10減少。減少分を黒羽が吸収します。 平太 ぎゃー! WC いくつくれる? サヤ 4しかないからどぞ〜。 平太 10まるっと。 サヤ さ〜て、どうやって攻撃していったらいいのでしょーね…。 WC さらに、このターンの終了時。 黒羽のノイズが微妙に色変化した。 ついでに、障壁の性質が変化。 平太 まじかいな! サヤ はい〜!? 忙しいね。 平太 でも、 今度は攻撃入るはず。 先ほど展開されていた障壁は、平太のフリング(武力)ソースの攻撃を無力化した。 であれば、性質変化後の障壁は、逆にサヤのソーサリー(理力)ソースの攻撃を無力化するものであると読み、故に、「今度は(平太の攻撃は)入るはず。」なのである。 サヤ そだね、お願いしまっす! |
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| 不可思議な色変化・障壁変化を行う黒羽。 それに対応すべく戦術を考える平太とサヤだが… |
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| サヤ
スピード3。
平太 スピード5。 WC 黒羽。スピード12。 平太 はえーよ! WC へーたに。ノイズが エルゴス 統白属性のこと。 ちなみに、黒=ゾートロア、青=ウィスタリア、白=エルゴス、赤=カグヤ、黄=ランファ、である。 の槍と化し、襲いかかる。テクニック22。 平太 がーど! サヤ は〜… 平太 何色だよ! こえーよ! サヤ ほんとだよ!! WC 威力は、白42。ソーサリーソースで。 平太 まだマシ。ギャンブルマトリクスで、全力ガード。 WC 良い判断。 平太 まじかよ! 0・0! サヤ え〜〜〜!! WC だせーーーーー!!! 平太 「身代わりL」 LPダメージを1回だけ肩代わりしてくれるアイテム。 (笑)。 サヤ すごい人だ! 黒羽は、それをあざ笑うように強力な攻撃を繰り出す。 平太は、判断力は素晴らしく良かったが、運は素晴らしく悪かったため、仕方なく「身代わり」を使ってこれを凌ぐ。 WC 次、へーた。 平太 もういっちょ!! 全力<ファイアーボール>+<反動反射>! サヤ いっけぇーー! 平太 命中6。いかねー! 今度は1と1だよ… サヤ OK。ましまし。 WC ギャンブルに勝ち、6で回避…じゃねー! タイです。 サヤ やった。 平太 や、やた! サヤ 今度こそ〜! 平太 1あっぷ…命中7! WC がっつり負けた。威力どうぞ。 平太 うし!! サヤ よっし! 平太 赤、30。 WC 属性で削ってダメージ14。 ターンラスト。再び<貪婪>。 平太 ああ、破棄しておけばよかった… WC で、色変化、障壁変化。 平太 やっぱし… |
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| 平太の攻撃は、黒羽にダメージを与えるも、倒すことはできない。 そして、2人から属性値を吸い上げつつ、繰り返し属性色・障壁を変化させる黒羽。 |
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| WC
黒羽。へーたに向かって翼を広げ…
サヤ あ、かばう。 WC ゾートロア 理黒属性。平太の弱点。 の矢が降り注ぐ。命中8。 平太 黒か…よくわかったね。 サヤ うん。なんとなく。 矢印の方向に変化かなって。 5属性の、克破・扶助の向きを表わす「矢印」のこと。 詳しくは、システム参照。 平太 まわってるのか… サヤ 皆さんご存知のように、 パリアンス 回避力を表わす数値のこと。 1なのよね。 平太 「身代わり」は? サヤ あるよ〜。…いいや。回避してみる。 平太 うんうん。身代わりあるなら。 サヤ うう。回避7。おしかった。 WC ぎゃー! 威力で0がーー! 平太 ないす! サヤ やた〜〜! WC 威力13のフリング。黒。 サヤ 威力13ならもらう。そのままダメージ。 で、属性オート変化だと期待して、チャージ。 黒羽の色変化の法則性にアタリをつけたサヤが、ファインプレーで平太をかばう。 そして同時になにやら企んでいるようだ… サヤ 先手とって、リキがかみつきにいくよ!! 平太 がんばれリキ! サヤ テクニック10。 WC 回避失敗。威力どうぞ。 サヤ あー、また低い。黒のソーサリーで、威力18。 WC ノイズまじりのカグヤを切り裂き、ゾートロアの力を纏ったリキの牙が黒羽を貫く。 黒羽は、ぱらぱらとほどけ、空間に散ってゆく。 サヤ お〜〜。 平太 死ぬかと思ったね。 サヤ うん。もっとタフだと思ってた。 平太 うんうん。攻撃が当たる相手でよかった。 WC 早い段階での色変化の見切りが勝負を分けたな。 平太 うんうん。 WC すばらしい。 サヤ 良かった良かった♪ |
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| 属性は5色の循環、障壁は「武力」「理力」2種の転換、つまり、黒羽の属性が「赤」になり、「武力障壁」を纏うのは10ターンに1回。 その攻撃チャンスを見切り、優位属性(黒)の理力攻撃を完璧に命中させたサヤ。 その戦略の前に、黒羽は敗れ去った。 |
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| 平太
バラバラに、右手を伸ばしてみるか…好奇心にまけて。
サヤ 「へーたん!」 WC もう、ノイズは空間に散り、触れる事は出来ない。 平太 「なんだったんだろ…」 サヤ 「ん?」 WC と、気がつくと、戦いの余波だろうか。ピアノが動いてしまっている。 サヤ 「そういえば、サルーンにいたんだよね…。」 平太 「そだ、とりあえずここが最後の部屋だ。」 WC ピアノの下に、四角い影が見える。 平太 近づいて見てみよう。 サヤ うん。 WC 本だろうか。表紙が埃をかぶっていないところを見ると、ただピアノの下にあったとも思えない。 ピアノの中に隠してでもあったのだろう。 サヤ 英語ですか? 日本語ですか? 平太 あと、気になるのは大きさだね。 サヤ とりあえず拾ってみますか。 WC 英語で書かれている。大きさは、丁度、手作りのブックスタンドをゆがめられるくらいの大きさと厚さ。 サヤ あらあら! 平太 「この本かな、朝顔の部屋の。でも、なんでここにあるんだ?」 サヤ 「う〜ん、それは…?」 平太 「誰かが隠した?」 サヤ 「とりあえず読んでみよ!」 平太 「うん それは任せた!!」 WC 例によってクレバネス判定だ。高校生は15、英文科は10だ。 サヤ 「え〜、戻ったら一緒に英語のべんきょする?」 平太 「断る!」 サヤ 「もう…。」 WC 文を見習え。 平太 うちはうち、よそわよそ。 WC 節分? 平太 それ、福は内。 サヤ ケアフルで、クレバネス11。 WC 簡易な文だ。 内容は、日記、あるいは覚書、備忘録に近いかもしれない。 日々の些細な物事。料理のレシピ。 時には、聞いたことのないような薬草の調合なども混ざる。 「魔女」のおばあちゃんがつけた日記、といえばこんな風になるのかもしれない。 平太 多分、ふくよかさんの持ち物なんだろうな。 |
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WC 筆跡は同じに見える。
長くに亘って、ゆっくりと書き継がれてきた、書き手の人となりを表すような「本」。 しかし、最後の最後。 明らかに、それまでとは違う。 内心を叩きつけるような。乱れた、強い筆跡と文体で書かれたページがある。 日記 『彼も、あの強い人も、死を想っている。私たちは似ている。逃れられない檻。 決して悪いことばかりではない。 でも、緩やかに、静かに、私たちを捕らえる鎖は、私たちの魂を締め上げ続ける。 彼に、彼の望むものを贈った。 彼が、安易にそれを使うとは思えないけれど、でも、きっと、道が一つでないことは、これからの彼に、小さな安堵を与えてくれるだろう。』 WC 次ページ。 日記 『私の方が先に、彼の向かおうとした道を歩いたら、彼は笑うだろうか。 自分が『空虚』に甘い言葉を囁かれていることは否定しない。 でも、それが私に残された最後の『自由』。 4人はどうするだろうか。 この危ういバランスに一石を投じてみたいと考えることは罪だろうか。』 WC 次のページに。 日記 『今日、逝くと決めた。 さようなら、私の家族。 『空虚』に負けても良い。 逃げ出しても良い。 それでも、 自由であって欲しい。 それだけを願います。』 WC 次のページ。 はじめ、とても違和感がある。 すぐに気づく…言葉が違うのだ。日本語。拙い筆跡の日本語が。 平太 「おっと…」 日記 『私は混沌の魔女。ランファの加護を受けた魔女です。 だから、他のみんなより、永劫の彼方に訪れる無価値なる混沌『空虚』の影響が少ないのだと思います。 すべての『たいせつなもの』が、『空虚』に呑まれる前に。 今のうちに、大好きなみんなのことを書いておきます。』 WC 子供の筆跡のようだ。 日記 『ナナシおばあちゃんはちょっと口うるさいところもあるけれど、料理の上手な気配り上手です。 たっぷり歌った後に飲む、おばあちゃんの淹れるお茶は本当に絶品です。 ウツロヅキのお姉さん(こう呼ばないと怒ります)は、キレイで頭が良い人です。 ちょっとだけ気難しいけれど、困ったときに一番本気で助けてくれる人です。 ユコウねえさんは、芸術家です。 明るく笑ってると普通のお姉さんですが、食事も寝ることも忘れて絵を描く姿を見ていると、背筋が震えます。 私もあんな風に音楽と向かい合ってみたい。 ビャクエおかあさん。 お別れする前に、お母さんと呼んでみたかったです。 私がこれから狂うとしても、 音楽を失い、 歌を失い、 『空虚』に飲まれても、 きっとお母さんを大切に想う気持ちは失わない。 失ってたまるものか。 たったひとかけらでも。 私の魂にかけて。』 WC 本の、次のページは、もう、空白だ。 もう何もかかれてはいない。 平太 「…」 サヤ 「比嘉ちゃん…」 平太 「…かえろっか。」 サヤ 「ねぇ、へーたん。ほんのちょっとだけ、ふくよかさんの部屋寄ってもいい?」 平太 「あ、うん、おけ。」 |
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WC 2階。主人私室。
桐の木札が下がっている。
サヤ 残っているものでさー、うーん…本以外のちっちゃいもので、なんかない? ふくよかさんが身に着けてたものとか。 WC ああ。 サヤ 髪留め、とか、アクセサリーとか、ブラシとかでもいいや。 WC クロゼットを探せば、簡単なアクセサリくらいはいくつか。 サヤ う〜ん、アクセサリーでいいよ。1個だけ拝借しますね。 WC では。本当に質素な、木彫りの髪留めとかで? サヤ うん。OK! 「ちょっとお借りしますね?」 WC 高くは売れないと思うよ? サヤ いーの! 平太 いやいや(笑)。 サヤ 「へーたん、ありがと。じゃ、かえろっか?」 平太 「うん 帰ろう! たぶんこれだけあれば礼さんも納得するよ。」 サヤ 「うん。そだね!」 礼(?) 「お香、あまってへん? …あ、使い切ってももうたのね…がっくし…経費が…」 サヤ そーれーはー…。 平太 ぴったしだもんね(笑)。 サヤ うん。しかも無駄遣いしてないよね! WC さてそんな話をしながら外に出る。 外は星空。 平太 タクシー呼ぼう。 WC 木々に切り取られた空の向こうに。 サヤ とりあえず、今日はホテルなのかな〜?とかとか。 平太 そだね、今日もお泊まりだよ…。 WC 暗い空に向って。 サヤ あわわ、明日学校だよね〜始発で帰る?とか。 平太 今から、ホテル行って、 崎陽軒 横浜に本店を持つ、焼売(崎陽軒ではシウマイと表記する)製造販売の老舗。 のシュウマイ買って…始発で帰ります。 サヤ うんうん。そんな感じ? WC 5羽の鳥が飛んでゆく。 |
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マトリクス・ゼロ シリーズ 「虚空の翼」 第2話 「うつつにうつるはまぼろしの」 了! |
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