虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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吐月館
 
〜7月19日(土)〜 【久々里駅前】

平太  「さやねぇ、おはよ。」

サヤ  「おはよ〜。」

平太  屋敷のだいたいの場所はわかっているんだっけ?

WC  礼が細かい住所と、簡単な地図をくれました。

平太  おけー。

WC  目的の場所は、駅からバスで35分。そこから徒歩で30分くらいです。

平太  山の奥なかんじかな?

WC  すっかり山の手。横浜とは名ばかりの山の中ですね。

サヤ  「リキは後から合流ね。電車とかバスとか無理だから。」

リキ  「ばう!」

平太  「お、走ってくるの?」

サヤ  「それはそれでかっこいいけど…」

リキ  「ぶわう!(ムリだ、阿呆!)」

平太  「なに言ってるかわかんない。」

サヤ  「呼べるんだよ〜。」

リキ  「ばうわうわう。わふん。ばわう。(サヤに呼んでもらえば、すぐ行けるんだよ。)」

平太  「へー、リキは何言ってるかわかんないけど…行こう行こう。」

リキ
  「ばうばう!(てめえこのチェリー!)」

サヤ
  「ま、バスから降りたら見られるから。」

平太  「あーはいはい。」

サヤ  「ごめんね。リキ。また後でね。」

平太  「じゃあ、いってきまーす。」

リキ  「わう!」

サヤ  リキいないのこわいよ〜。

WC  ということで、サヤは リキの分のでっかい荷物持って 大型犬であるリキは、いつも犬用のリュックを背負っています。 電車に乗ると。

サヤ  そですよ〜。

平太  おれ片手だから、手伝えないや。

サヤ  だいじょぶ。

WC  では、久々里駅から、電車を乗り換えながら、横浜です。約1時間20分。

サヤ  「横浜からバスか〜。」

WC  まだ朝マックがやってる時間です。

サヤ  「おなかすいた?」

平太  「そういえば、ご飯食べなきゃね。」

サヤ  じゃ、どこかしらで食べたってことで。

平太  じゃあ、駅で食事して…バスかな。

サヤ  うん。

WC  では、バスに乗って市外から離れ、山の手でバスを降ります。 
高速とのICになっているような場所で、山の中に道路一本。まばらな民家、そんな風景の場所です。

平太  「ここから歩いて30分?」

サヤ  「うん、確か。じゃ、リキ呼ばなくちゃ。」
という訳で、髪飾りを外します。髪飾りの根元には青い鈴のような丸い飾りがついています。 それを軽く振りま〜す。

WC  リィン…と澄んだ音が響く。そして、響きが消えるのに呼応するように、サヤの影から白い獣が躍り出る。

リキ  「ばう!!」

サヤ  「リキ(わしわし)。」

平太  「おー、すげーな…」

サヤ  「ま〜、リキはいつでも一緒なので。」

リキ  「ばふう…ばお!(ふ、わかったか? 格の違いがな!)」

平太  「なに言ってるんだか…」

サヤ  「こらリキ。あんまり失礼な事言わないの。」

平太  「失礼なこと言ってたんかい!」

リキ  「わふ!(ふ、サヤが言うなら仕方ないな。)」

サヤ  「ん〜? いや、ごめんねへーたん。気にしないで。」

リキ  「ばふん?(本当のことさ、気にするなってチェリー?)」

平太  「馬糞?」

サヤ  「リキは男の子にはちょっと厳しいっていうか…」

リキ  「ばう!?」

サヤ  「こら2人とも〜〜!」

平太  「すいません。」

リキ  「わう…」

平太  「ま、とりあえず…歩きながら人に会ったら屋敷の事聞いてみる?」

サヤ  「ん、そうだね。」

WC  リキはサヤの肩から自分のリュックを咥え下ろし、背負うために悪戦苦闘。

サヤ  「あ〜あ〜、ごめんね。ありがと。」

サヤ  リュックをリキに背負わせてあげます。

リキ  「わうん!」

WC  で、そこから、細い舗装道路を山に入ってゆくわけですが。残念ながら、人には会いません。

平太  近くに民家は?

WC  バスの通っていた道路沿いにはあったんですが、今歩いてゆこうとしている舗装道路の周囲にはありませんね。

平太  了解。

WC  林道といった方が正解です。山の中の林道をイメージしていただけると。

平太  整備はされている感じ?

WC  車1台分程度の道路ですが、一応アスファルトですし、路面はきれいです。 ガードレールなどは望むべくもないですが。

平太  じゃあ、どんどん行きますか。

サヤ  とりあえず、周囲の様子を普通に確認しつつ、どんどん行きましょ。

WC  さて、歩いてゆくと、徒歩30分は大嘘でした。

平太  えー(笑)。

サヤ  なにぃ。

WC  そろそろ気温が上がってきますが、木々のおかげでそれほど辛くはありません。 
地図上では、しばらく(15分くらい)歩くと、右に折れる道があるはずなのですが、それが見つかったのがなんと30分後。
…どう考えても平地感覚で距離計算・時間計算しています。

平太  「礼さんの嘘つき…」

サヤ  「ね〜。実際に歩かせれば良かった。」

平太  「あと30分は歩くって事だな…」

WC  しかも、その右に折れる道と言うのが、殆ど獣道で、足元は舗装なんてされてません。山に分け入るようなものです。

平太  「あ、1時間はかかるな…。」

サヤ  ケータイの電波は大丈夫?

WC  ケータイは、電波状態1と0の間をウロウロしてます。

平太  「ていうかさ…今晩の宿ってどうするの? あと、ご飯ね。」

WC  イノシシでも狩ると良い。リキもいるし。あと、家は「波打つ箱」で。

平太  だったら、屋敷で寝るわい(笑)。 仮想

  「宿代は、領収書きってもらっといてえな。ちゃんと出るさかい。…あればやけどな。宿。」

平太  来る途中お店あった?

サヤ  コンビニとかなさそ。

WC  注文が多いレストラン 宮沢賢治の童話を引いたネタ。…誰でも知ってるか。 くらいならあるかもな。

サヤ  タクシー乗り場はあったのかな?

WC  駅にはありましたが、バス停の周りにはなかったです。

サヤ  ですよね。

平太  もう進むしかないな…。

サヤ  うん。最悪タクシーは呼べる。

平太  さっきの曲がり角までね(笑)。

サヤ  うん。では、進みますか?

平太  もう手遅れだ。行くしかない。
 
WC  さて、悪態をつきながら悪路を上ってゆきますと、そろそろ11時、位に、正面の木々の合間に、建物の屋根が透かし見えてきます。 
やっとのこと。「礼の嘘つき!」万感の思いを込めて。 森の中にたたずむ洋館の前にたどり着きます。

サヤ  「ふぅふぅ、やっと着いた〜。」

平太  でっかい?

WC  築は明治・大正のころでしょうか。3階建ての、しっかりした作りです。
構え 建物を正面から見た時の『横幅』のこと。 は、30から40m。 門や庭園などはありません。森が途切れ、20m程度の距離を開けて、玄関があります。

平太  ぼろぼろの廃墟って感じ? きれいに残ってる?

WC  壁や屋根はまだしっかりしており、最近まで人が住んでいたことを想像させます。 
窓や玄関の木枠なども、風雨にさらされて傷んでいるような感はありません。 
見た目は、現役の、洋館です。

平太  「5人の魔女か…あと一人がここで死んでるとか…ないよね?」

サヤ  「う〜ん。ないとは言えないよね。」

WC  ただ、正面から見える窓は、全て、外から板で打ち付けられ、中を窺うことはできません。

平太  「とりあえず、入ってみようか…」

サヤ  「玄関は開いてるのかな?」

WC  玄関に近づき、3段ほどの ファサード ここでは、玄関扉の中心軸を中心とした半円状に作られた階段のことを指す。 を上り、両開きの大きな扉に手を掛けますが、扉はびくともしません。

サヤ  「だよね〜。どうしよ。鍵とかもらってないし。体当たり?」

平太  「魔女の家だから…合い言葉で開くとか?」

WC  ゴマ?

平太  オープン・セサミ、か?

WC  レッツセイ!大きな声で!

平太  「ひらけ!ごま!」

仮想扉  「ひらくかー!!!」

平太  「がちゃがちゃ…まあ、そうだよね(笑)。」

サヤ  「どこか裏口とかないかな?」

平太  「じゃあ、他の開きそうな窓とか、裏口とか探そうっか。」

WC  と、そのとき、サヤのケータイが。

平太  「誰の電話?」

サヤ  「はいはい?」

  「あ、ねーさ…れ、むろ…しやけど…」

サヤ  「うん?れーさん?」

  「なんや電波悪いな。…こにおる…ん?」

サヤ  「何かよく聞こえないけど。れーさん、屋敷の玄関あかないよ。」

WC  毎回、電波が途切れ途切れ、という演出が面倒なので、ココからはイメージ変換お願いします。

サヤ  はいよ。

  「あー、まさかもう現地? すっまーん。」

サヤ  「え、どういうこと!?」

  「入れてる?」

サヤ  「ううん。入れない。」

  「そうですよね。いやほんますんません。」

平太  「なになに?」

サヤ  「よくわかんない。」

  「完全にこっちのミスや。ねーさんたちに鍵わたそおもて調べたら、これがびっくり。
買い上げの手続きできてんのに、鍵の受け渡しだけ済んでへんねん。」

サヤ  「へ? 買い上げってGRSで?」

  「そや。そこはもう、うちらが買ってんのに、鍵だけないねん。」

サヤ  「そなの!?」

  「わるい。ほんまミスった。かんにん。」

サヤ  「鍵はどこにあるの?」

  「あー。あんな。その近くに、おんなじような洋館みえへん?」

サヤ  「(GRSで買い上げてるらしいよ。ここ。でも、鍵だけもらってないって。)」

平太  「(うへー…)」

サヤ  「同じ洋館?」
周りを見渡す。

WC  見えません。山の中ですし。

サヤ  「見えないよ〜。」

平太  「ないよ、どっちの方向?」

サヤ  「れーさん、どっちの方向?」

  「あー、そっから西の方や思うねんけど。」

サヤ  「西だって。」

平太  いろいろ角度変えながら見てみよう。

WC  見えません。あえて言うなら、獣道に入る前の林道は西に向ってましたから、そっちにあるのかも。

平太  「全然見えない、この建物の裏?」

サヤ  「この建物の裏?」

  「いや? 距離で言うと、そうやね、1.5kmってとこやろか。」

平太  「とりあえず、それを探すとして、そこに鍵があるの?」

サヤ  「うぅぅ。ともかくその近くの洋館に鍵はあるのね?」

  「そうそう。そこんちがね、その洋館の持ち主やってん。」

サヤ  「誰かいるの? 今も。」

  「おるよ。吐月さんって…げっ! あの吐月かいな!?」

サヤ  「え!? なに誰??」

  「おお…ねえさんすんません。今回はほんまに俺が悪かった。」

サヤ  「なになに? 知り合い??」

平太  「うーん…なんか大変な事になってるな。」

  「あんな、政界財界にごっつカオの利く偏屈一族がおんねん。吐月家ゆうて。」

サヤ  「へんくつ…」

  「まー、今回はただ鍵受け取りたいだけやけやし、そんな因縁つけられることない思うけど。」

サヤ  「え〜会いに行ってすんなり鍵もらうのもできなさそう?」

  「いや、そんなことないよ。買取の書類はちゃんとそろてるし。
でも…ほんま悪いねんけど、『失礼のないように』鍵受け取ってくれへん? …ほんま気ぃつけて。」

サヤ  「う〜〜ん、よくわかんないけど。やってみる。」

  「ボンにもよお言っといてくれへん? 『くれぐれも失礼のないように!』て。」

サヤ  「うん、伝えるよ。」

平太  「え?なになに?鍵借りにいくの?」

サヤ  「うん。借りに、というか貰いに。でも、なんか厄介な人みたい。
『くれぐれも失礼のないように!』だって。」

平太  「ふーん…りょうかい。」

サヤ  「GRSのIDカードは見せても大丈夫なんだよね。」

平太  「見せた方が話がはやいのかな?」

  「そらそうやね。バンと見せたって。
ううん…ほんまは入り口ぶっこわしてもうてもええねんけど…建物の調査書類では、壁も扉も、なんや戦時に備えてごっつ頑丈に作ってある言うしな…しゃあないねん。たのんますわ。」

サヤ  「そうなんだ〜〜〜。いや、体当たりする前に電話くれてありがと。」

  「おそろしいわ。ねえさんほんまおそろしい。」

平太  (笑)

  「ボンに代わってくれへん?」

サヤ  「は〜い。  はい、へーたん。れーさん代わってって。」
渡すよ。

平太  「もしもし?」

  「ボン。やばいときにはねえさん止めてな。マジ頼むで。」

平太  「あ、はい(笑)。」

  「すまんけど、頼むわ。」

平太  「じゃあ、鍵をもらいに行ってきます。」

WC  ぷー、ぷー…

平太  ぴっ。

サヤ  「れーさん、何か言ってた?」

平太  「うん。さやねぇをよろしく頼むってさ(笑)。」

サヤ  「え?」

WC  ああ。良い逃げだ。

平太  「じゃあ、道をもどろっか。」

サヤ  「…まぁ、いいや。うん。」

WC  話題転換も良い。

サヤ  で、吐月家のこととか、へーたんに伝えました。

平太  おけー。 
 
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