虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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吐月館
 
WC  道もわかっているからでしょう。くだりは早く、30分程度で林道に戻れます。

平太  じゃあ、らしき道の方へいこう! 
1時間ぐらい戻るのかな?

サヤ  はい!ちなみにそこまでに脇道とかないんだよね?

WC  特にわき道などはなく、30分も歩くと、やはり山の方へ登ってゆきます。

サヤ  「もう12時だね〜。」

平太  「はらへるね…。」

サヤ  「煮干しならいっぱいあるよ。」

リキ  「ばう!?」

平太  「煮干しだけじゃ、高校生の男子のおなかはふくれないよ、さやねぇ。」

リキ  「ばうばう。」

サヤ  「うん。それにリキを興奮させちゃったみたい。」

WC  さらに30分ほども坂を登ると、先ほどの館とそっくりな、ただし玄関前は先ほどよりずっと広い館にたどり着きます。
こちらは、窓なども開放されており、人の気配もあります。

平太  「ここっぽいね…。」

サヤ  「うん、誰かいるかな?  失礼のないように、失礼のないように…。」

WC  玄関前の広場に、黒塗りの大型車が3台ほど止まっており、その周囲に何人かの男性が立っています。

サヤ  私が話しかけたほうがいいよね?

平太  うん。お願いします(笑)。

サヤ  「あの、すみません。  吐月さんのお宅はこちらでよろしいでしょうか?」

WC  胡散臭そうに二人連れを見たその男性たちの一人が答えます。

男性  「そうですが、我々はこちらの家人ではないので、あちらの玄関で直接たずねられたほうが宜しいかと。」

WC  映画やテレビで見る、SPのような雰囲気だ。体格も大きく、身のこなしに隙もない。

平太  「…」

サヤ  「あ、そうですか。ご丁寧にありがとうございます!」

WC  玄関に近づくと、門扉の脇に扁額が掛けられている。 …「吐月館」。

サヤ  じゃ、インターフォンを…、ってインタフォンないの?

WC  その横に、呼び鈴のようなものがついている。

サヤ  呼び鈴をならします。

WC  ちりん、ちりん。 古臭い音を立てた呼び鈴に応えて、玄関が開きます。 
顔を出したのは、舞台俳優と見まごうばかりの金髪の男性。

サヤ  おおぅ。

WC  顔つきも、明らかに黄色人種の骨格ではありません。

平太  「こんにちは。」

金髪の男性  「どうしました?」

サヤ  「こんにちは。」

WC  流暢な日本語だ。

金髪の男性  「道にでも迷いましたか?」

サヤ  「いえ、私、GRSの川原沙夜と申します。」
IDカードを見せる。

WC  若い顔に、人懐こい表情を浮かべて、男性はカードをしげしげと見る。

金髪の男性  「うん? してみると、お客様、と言うことですね?」

サヤ  「東側の洋館の鍵を受け取りに来たのですが…。」

金髪の男性  「そうですか。では、どうぞ。ようこそ、吐月館へ。」

WC  金髪の若者は、2人を館の中に招く。 靴は脱ぎません。洋館ですから。

平太  「失礼します…。」

サヤ  「え、あっ、お約束もしてませんでしたし。長居しても申し訳ないので、受け取ったらすぐ失礼しますので、お気遣いなく。」

金髪の男性  「いえいえ。かまいませんよ。むしろ、お客様に玄関前で立ちぼうけを食わせる方が、よほど失礼です。どうぞ、Lady。」

サヤ  「あっ、はい。失礼いたします。」
 
WC  館の中は、落ち着いた、それでいて高級そうな調度品が控えめに置かれた空間になっている。

サヤ  「(へーたん、こういうの慣れないんだけど…。)」

平太  「(俺も慣れてないから安心して(笑)。)」

サヤ  「(安心できないよ〜〜。)」

WC  玄関の中は、3階まで吹き抜けになった玄関ホールのようだ。 
正面には、左右に開くゆるいアーチを描いて2階にあがる階段があり、また、左右の壁には、2階に向かう階段を庇にするような位置に、つやのある木材でできた重厚なドアがある。

サヤ  一応、怪異の気配とか探っても平気そうな状況?

WC  どうぞー。ただ、歩きながらでは限界がありますがー。 
金髪の若者は、右の扉の方に歩いてゆく。

金髪の男性  「こちらへどうぞ。」

平太  じゃあ、入っていきます。

サヤ  私もとりあえず、付いて行きます。

WC  扉を開けると、廊下に出ます。 
左手に進む若者に続いて廊下の進行方向に向き直ると、廊下の先、左側の壁に大きな扉があり、右側にもいくつかの扉が見えます。

平太  「外に車が停まっていましたけど、他にも来客があったんですか?」

金髪の男性  「ええ、そうですね。詳しくはご説明できませんが。」

平太  「そですか。」

WC  青年は、右手の一番手前の扉を開く。
中は、ソファやサイドボードが置かれ、落ち着いた調度品などが適度に飾られた、応接室になっている。

サヤ  「お忙しいときに突然おしかけてしまい、申し訳ございません。」

金髪の男性  「いいえ。忙しいのはご当主だけ。 我々家人は有閑をもてあましています。大歓迎ですよ。」

WC  と、手振りでソファを勧めてくれる。

サヤ  「失礼します。」 とソファに腰掛けます。

平太  「失礼します。」

金髪の男性  「では、しばらく、お寛ぎくださいね。」

サヤ  「はい、ありがとうございます。」

WC  青年はにっこりと笑い、会釈して出て行く。 
程よく取られた窓から、計算されたかのように採光され、非常に落ち着いた雰囲気がある。

平太  「寝れるな…。」

サヤ  「ステキな所だね〜。」
ふぅ〜。じゃ、改めて<星戟 サヤのスキル。
『怪異』の気配を探知することができる。
>チェックしようかな。

WC  チェックどうぞ。

サヤ  ギャンブルで、6なので、フィール13です。

WC  怪異の気配はわからないですね。リキも、鼻をふんふんと動かしていますが。

サヤ  あるかもしれない? ないかもしれない? ホントに分からない感じ?

WC  明らかに大きな反応は「ない」です。
微弱なもの、気配レベルのものは「あるのかないのかわからない」です。

サヤ  了解。

WC  こんこん。

平太  姿勢を正すか。

WC  ノックのあとに、入り口が開き、先ほどの青年とは違う、もう少し年配の、穏やかな雰囲気の青年が入ってくる。 日本人のようだ。

平太  金髪じゃないのね。

サヤ  立ち上がります。

穏やかな雰囲気の青年  「こんにちは。」

平太  「こんにちは。」

穏やかな雰囲気の青年  「あ、そのままで。」

サヤ  「あ、すみません。」

WC  彼の手には、茶器を載せたトレイがある。

穏やかな雰囲気の青年  「どうぞ、喉を潤してください。」

平太  「ありがとうございます。」

サヤ  「ありがとうございます。いただきます。」

WC  手際よく、二人の前にグラスが置かれ、若草色の液体が注がれる。

穏やかな雰囲気の青年  「お口に会えば良いですね。冷やした煎茶ですが。」

平太  のどが渇いているからすぐ飲む。

サヤ  「いただきます。」

WC  すぐにへーたのグラスにはお代わりが注がれる。

平太  「あ、すいません。」

穏やかな雰囲気の青年  「いえ。」

サヤ  とりあえず、一口飲みます。

WC  高級な茶葉で入れたお茶は、素人にもすぐわかる旨みとコクがある。これほんと。

サヤ  「おいしいですね!」

穏やかな雰囲気の青年  「ありがとうございます。」

平太  「ここの当主の方ですか?」

WC  礼を言って笑う彼の表情は、非常に控えめで、彼の立場が間違いなく「使用人」などに当たることを教えてくれる。

穏やかな雰囲気の青年  「いえいえ、滅相もない。」

平太  「ですよね。」

穏やかな雰囲気の青年  「当主は、今…」

WC  と、ドアが再び開き、背の低い、眼光の鋭い老人が入ってくる。

眼光の鋭い老人  「おうおう、すまねえ、待たせたな。」

サヤ  再度、立ちます。

平太  「あ、こんにちは。」

サヤ  「こんにちは。お忙しいところありがとうございます。」

WC  老人は鋭い目で2人をねめつけると、鷹揚にうなずく。

眼光の鋭い老人  「まあ、座ってくれや。」

サヤ  「はい、失礼します。」

WC  2人を追うように、老人もソファにどっかりと座る。

眼光の鋭い老人  「で、GRSだっけ? 室伏んとこのかい?」

サヤ  カードを出して、 「はい。GRSの川原です。」

平太  「GRS、大門平太と言います。」

柏陽  「おう、吐月柏陽だ。」

WC  カードはチラッと見たきりで、手を振って戻させる。 「とげつ・はくよう」。 ニュースで1度くらいは聞いたことがあるかもしれない。
「かなまる・しん」とか、「たなか・かくえい」とか、「おざわ・いちろう」 いずれも大物政治家。フィクサーである。 とか、そういう重みを持つ名前だ。

平太  おけ。

柏陽  「で、鍵だっけな?」

サヤ  「ええ。」

柏陽  「すまねえな。すぐにくれてやりてえんだが、うちは、そういうことにちょいと面倒な手続きがあってよ。 いま、お前さんたちの前に来た客が揉めてんだよ。そいつらを帰すまで、待っててもらえねえか。」

WC  たずねているような言葉面ではあるが、口調は有無を言わせない。迫力、というのだろうか。

柏陽  「共由。」

WC  先ほどの、使用人の男性に親しげに声を掛けた柏陽は。

柏陽  「たのまあ。」

WC  柏陽が入ってきてからは、ドアの脇に待機していた青年が応える。

共由  「はい。かしこまりました。」

柏陽  「じゃな。後でよ。共由が良いようにしてくれっから。何でも言ってくれ。」

サヤ  「はい。わかりました。」

WC  柏陽は慌ただしく出てゆく。

共由  「さて、と。鳴海共由(なるみ・ともよし)です。」

平太  「大門平太です。」

共由  「短い間ですが、よろしくお願いしますね。」

平太  何歳ぐらいの人?

WC  20代後半でしょうか。サヤよりは年上に見えます。

サヤ  「川原沙夜です。」

WC  共由は微笑んで会釈する。

共由  「さて、と。」

平太  「どのくらいで戻ってこられるんですかね…」

共由  「 御前 読み仮名は「おまえ」では決してない。「ごぜん」。
貴人を指す言葉。ここでは当主である吐月柏陽のこと。
はああ言っていましたが、今日のお客様は夕方までかかりますね。」

平太  「そですか…」

共由  「ほんの5・6時間ですが、待つ身には長いですね。」

平太  グー…(腹の虫)…

WC  共由が少し笑って。

平太  「あ、すいません。」

共由  「お昼はまだですか?」

サヤ  「ええ、そうなんです。」

共由  「では、ちょうど良いですね。お振る舞いさせていただいても?」

平太  「…えー…」

平太  さやねぇを見る。

サヤ  「よろしいんですか?」

共由  「こんな場所に家があると、自分の料理を人に召し上がっていただく機会がなかなかないんですよ。 僕の腕の上達の肥やしになっていただけませんか?」

WC  と、笑う。

平太  「いただきます!」

サヤ  「私たちも今日こちらに来たばかりで、どこにお店があるのかもわからず困っていたんです!」

共由  「では、こちらにどうぞ。」

WC  共由は立ち上がり、ドアを開ける。

サヤ  「(へーたん、今日は屋敷の調査は諦めた方がよさそうだね〜。)」

平太  「(だねー…)」 
 
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