虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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密室
 
WC  吐月館、1階ホール。 山奥の21時近くともなれば、周囲は暗く、静かだ。 
共由が、2階から見下ろす詠歌に咎める様な視線を送り、君たちに向き直る。

共由  「とりあえず、応接室に行きましょうか…。」

平太  「…そうですね。」
詠歌さんの顔を見つつ、ついて行くよ。

WC  他の住人は姿を見せない中、吐月館ホールを出て、応接室に。 
詠歌の顔は蒼白で。美しいが、不思議な威圧感がある。彼女の「吐月の一族」としての本当の顔なのだろうか。

平太  それに負けるつもりはない。

サヤ  へーたん、熱いですね〜。

WC  応接室は、やわらかな照明に照らされ、先ほどの不穏な空気が嘘のようだ。 
共由は2人にソファを勧め…

共由  「お疲れ様でした。仕事の調子はいかがですか?」

WC  などと声をかけながら、てきぱきとお茶を出してくれる。

平太  「まあまあ、ってとこです。でも、いきなりひどいですね、人殺し扱いなんて!」

サヤ  「まぁまぁ。」

共由  「ああ…本当に、申し訳ないです。詠歌さんも女性ですから、精神的に参っているんですよ。」

サヤ  「でしょうね…。お察しします。」

平太  「…で、結局なにがあったんですか?」

共由  「まあ、お2人に関係のあることではないでしょうし、すぐに市内の方にホテルを手配いたしますから。」

WC  穏やかに微笑みながら、共由が断ずる。

平太  「ところがそういうわけにもいかないんですよ…。」

サヤ  「ですね。たぶん。警察とかからしたら。」

共由  「警察は、介入してきません。ここは、吐月館ですから。」

サヤ  「あぁ。そでしたね。」

共由  「ご心配はなされなくても大丈夫ですよ。」

平太  「…警察だけじゃなくて…仕事関係もあるんです。」

WC  共由が首をかしげる。

平太  「どうやら、長月館の住人から、柏陽さん宛に、手紙とともに、鍵を送った様子があるんです。
で、長月館をさらに調べるために、その鍵をお借りしようかと思っていたんですよ。」

共由  「鍵…?」

平太  「はい。たぶん…『朝顔』の木札がついている鍵だと思うんですけど。」

サヤ  「ちょうど、ご当主にお聞きしようと思っていた矢先だったので。」

平太  「だから、帰る訳にも、他のホテルに行く訳にもいかないんです。」

共由  「ふむ…本来なら、鍵がないなら扉をこわせば、というところでしょうけど…
向こうがこちらと『同じ』なら、それも難しいでしょうしね…。」

平太  「…すごい頑丈な扉って事ですか?」

共由  「ええ。戦時中に、砦として使えるように作られたとも言われてますね。お気づきになりませんでしたか?」

平太  「うーん…そんなに頑丈とは思わなかったです。」

共由  「しかし、困りましたね…。」

平太  でも、戦ってあまり影響が無いって事は、頑丈なのか。

WC  共由は思案顔だ。

共由  「仕事の方を、一時中断して頂いて、とりあえずお帰りいただくわけにはいきませんか? 
鍵は、私の方で探して、そちらにお送りしますから。」

サヤ  「あの…、私がこんな事言うのもおかしいかもしれませんが。 本当に無関係なんでしょうか?」

共由  「…え?」

WC  衝撃発言。

平太  「え?」

サヤ(?)   「実は犯人、私なんです。」

サヤ  誰だ〜。

サヤ(?)   「遺産目当てで。」

平太  「さやねぇ、何をいきなり…」

サヤ  「私たちが、色々調べていた事が原因になってしまった、って事ないですか? 
いや、別に根拠とかないんですけど。」

WC  共由は考えて。

共由  「難しいですね。」

サヤ  「こんな、たまたまお邪魔していたタイミングで、だったので。」

共由  「タイミングを言えば、偶然と片付けるのは早計のような気がします。詠歌さんも、そう思っているからの発言でしょうし。」

サヤ  「えぇ、詠歌さんが私たちを真っ先に疑うのわかりますよ。だって、普段は予約してくる方達ばかりでしょうし。」

平太  「いやいや、偶然ですから!」

共由  「いえ、お2人が犯人だ、と言っているわけではないんです。
お2人の来訪が、何らかのきっかけになった事は否定できない、というだけですよ。」

WC  と、へーたにむかって微笑む。

サヤ  「はい。」

平太  「それでも、気分は良くないな…。」

共由  「ですからこそ、お帰りいただいたほうがよろしいかと思ったんですよ。」

平太  「だったら、この事件すら、俺たちの仕事関係って事になるじゃないですか。さらに帰る訳にはいきませんよ。」

共由  「お2人がここで『何かをし続ける』限り、きっと気分を悪くし続けることになると思いますよ…。」

サヤ  「でも、私たちの仕事に関わる可能性があるなら、私たちがいた方がお役にたてると思うんです。
それにきっとこれからもお邪魔することになると思いますから。」

平太  「うん。片をつけるなら早いほうがいい。」

WC  共由は、それでも渋っているが。まあ、当たり前だ。

平太  「もしよかったら、状況を教えてもらえませんか?」

共由  「…そうですね。それをお話しすることで、お二人を否応なくこの件に関わらせることになってしまうのですが…」 
 
???  「良いじゃない共由君。『解決』してもらっちゃえば? その探偵さんたちに。」

WC  ドアを開け、詠歌が入ってくる。

共由  「詠歌さん。」

平太  立ち上がって。
「先に言っておきますけど、ホントに何もやってないですからね!」

WC  へーたの発言は無視し…

詠歌  「…ごめんね、喉が渇いちゃったの。何かもらえないかと思って。」

平太  「…」

WC  共由はとりあえず詠歌に一杯のお茶を差し出す。

詠歌  「ありがと…。」

サヤ  「詠歌さん、ほんとに…なんていったらいいか…。」

WC  詠歌は、静かにティーカップを啜りながら、立ち去る気配は見せない。

詠歌  「良いわ。私たちは吐月だもの。気にしないで。気にしないから。」

平太  「じゃあ、話を聞かせてください、何があったのか。」

WC  詠歌は、共由に軽く頷く。 共由は、それでも渋りながら…

平太  「できれば、犯人呼ばわりした根拠も聞けるとありがたいです。」

共由  「つい1時間前のことです。 
御前、吐月柏陽が、紅簾の間に倒れているのが発見されました。
呼びかけたのですが返事がなく、1時間弱も身じろぎ一つしないので、亡くなっている可能性が高い、と…。」

詠歌  「スパッと言っちゃいなさいよ。あれはもう、ダメよ。」

平太  「ん? まだ紅簾の間の中にいるんですか?」

詠歌  「いる、じゃなくて、ある、ね。」

共由  「詠歌さん!」

平太  「もうそういう扱いかよ。」

サヤ  「えっと…、すみません。よくわからないんですけど、お医者様とか呼んでないんですか?」

共由  「呼んでも、無駄だと思います。御前には、触れられませんから。」

サヤ  「!? どういうことですか???」

平太  「はぁ…それもここのルールですか。」

共由  「御前は、紅簾の間で倒れていました。鍵をかけたままで、です。 
覗き窓から覗いた蒼次郎さんが、御前を発見したそうです。」

平太  「そういうことか…。」

共由  「倒れていた場所は紅簾の間の中央近く。鍵は、たぶん御前の手の中です。」

サヤ  「スペアキーとか1個もないんですか?」

共由  「ありません。」

平太  「…ちょっとまって、長月と吐月が似てるなら、長月の鍵で開かないかな?」

共由  「試してみますか?」

平太  「やってみる価値はありますよね! やってみましょう!」 
 
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