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虚空の翼
◆2話 ◆ うつつにうつるはまぼろしの |
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| 密室 | |||
| WC
共由が先にたち、ドアを開ける。
詠歌は面白そうについてくる。 階段を上がり、3階まで。 件の紅簾の間の前に、金髪の青年と、初老の男が立っている。 蒼次郎 「ん?どうしたのかね?」 共由 「蒼次郎さん、このお2人が、状況を知りたいと…」 平太 「ここの鍵が、長月館の鍵で開くか試させてください。」 WC 蒼次郎は少し渋い顔をしたが。 詠歌 「いいじゃない。ここで固まってたって状況は動かないもの。」 WC 詠歌が口を開くと、ため息をついて。 蒼次郎 「ふむ。では、貸してくれ。」 WC と、へーたに手を差し出す。 平太 「いえ、おれがやります。」 蒼次郎 「すまないが、そういうわけにはいかない。ここは吐月館で、今は大きな事件がおきている。」 平太 「ルールですか? おれが信じられないからですか?」 蒼次郎 「我々にとって素性の明らかでないものに、紅簾の間を荒らされる訳にはいかないんだ。 君は、昨日あったばかりのだれかに、自分の心臓の手術をさせられるかね?」 平太 「わかりました。」 サヤ 「ですが、鍵の所有者は私たちです。そして大切な調査資料の一つです。それを簡単に渡せると思いますか?」 平太 「いいよ、さやねぇ…これがここのルールだ、返してもらえれば。」 蒼次郎 「当然、鍵穴に合うかの確認の後、すぐに返すよ。約束しよう。」 サヤ 「ええ。お願いします。」 平太 「どうぞ。」 じゃあ、「桐」「麦穂」「夕顔」「芍薬」「月下美人」の鍵をすべて渡すよ。 WC 蒼次郎は鍵を受け取り、ひとつひとつ試してゆく。 サヤ 「あの…、一つ疑問に思ったんですけど…なんで、皆さん事件っておっしゃるんですか? 心臓発作で倒れている可能性だってあるじゃないですか?」 平太 「ほんとだよ。」 サヤ 「だったら、1時間も待つんじゃなくて、業者の人でも呼んで扉壊さないと、助かる命も助からなくなっちゃいますよ。」 詠歌 「持病なんてないわ。いたって健康『だった』わよ。お父様は。」 ミハエル 「紅簾の間でさえなければね。扉を壊すのも良いかも。」 蒼次郎 「吐月の全てがここで決められる。 それは、吐月に関わって生活する全ての人間、系列会社や傘下企業の社員やその家族の全てをここで決められるということだ。」 詠歌 「あんた、責任取れる? 何億円ていうお金の。何千人ていう人間の人生の。」 共由 「旧い、だからこそ、固い堅い、ルールになってるんです。」 WC 蒼次郎が、手を止めて言う。 蒼次郎 「ふむ。どうやら、無理のようだね。鍵を返すよ。確認してくれ。」 平太 「はい。」 サヤ 「じゃあ皆さんはこれからどうするんですか?」 WC 蒼次郎が答える。 蒼次郎 「決まりに従うのさ。」 WC ミハエルと詠歌は2人で肩をすくめ、階下に降りてゆく。 それを見送った蒼次郎は、へーた達にむかい。 蒼次郎 「吐月柏陽は死んだ。資格の在るものが、次の継ぎ手になる。それだけだよ。」 サヤ 「決まりって…何か扉を開ける方法あるんですか?」 平太 「ルールだけの話だよ、さやねぇ。」 サヤ 「わかりますけど。 私が質問しているのはそういうことじゃありません。 この部屋の中の柏陽さん、どうするんですか?」 蒼次郎 「次の継ぎ手が、再び全てを決めるのだよ。継ぎ手が決まるまで、ここはそのままだ。」 サヤ いらいらいらいらいらいら… WC 蒼次郎も下に向かう。 |
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| 平太
「おかしいよね、ここの人たち…」
サヤ 「も〜だめ。」 WC 共由がため息をついて言う。 共由 「帰った方が良かったでしょう?」 サヤ 「えぇ。そうでした。私には許せません。」 平太 「まあまあ…」 サヤ 「ふぅ。ちょっと外の空気吸ってきたい。」 共由 「危ないですよ。大門さんか誰かと行かれたほうが良いです。僕でよければお供しますが。」 サヤ 「リキがいれば、大丈夫です。」 共由 「ああ…」 サヤ 「あはは。すみません。ちょっと一人で頭冷やした方が良さそうなので…」 平太 「じゃあ、おれも行かない方がいいのか…」 共由 「お2人は、夕食はとられますか? よろしければ、ご用意しますが。」 WC 帰る選択肢を出さないのは、関わってしまった以上、「次」が決まるまで二人を帰せないことを暗に伝えているのだろう。 サヤ 「う〜ん。そうですね。食堂で皆さんと一緒に、という気分ではないですけど。」 共由 「皆さんはお済みですから、お部屋にお持ちしますよ。」 平太 「すいません、お手数かけます。」 サヤ 「ありがとうございます。」 共由 「昨夜と同じ部屋が念のために掃除してありますから、ご自由にお使いください。 折を見て、食事はお届けしますので。…では。」 平太 部屋をのぞいても、暖簾みたいなのがあって中はしっかり見えないんだっけ? WC そうだね。視界は悪い。小さな覗き窓から、中は見えるけど。 平太 なら、血が出てるとかもわからないのか…一応のぞいてみよう。 WC 10cm×20cm程度の金板を持ち上げ、中を覗く。 消えかけの灯明に照らされ、うすぐらい室内が見える。 緋色、朱色、赤、赤紫。 様々な赤がゆれる室内の、中央より、少しだけ奥まったところだろうか。 扉に足を向け、うつぶせに倒れる老人の体がある。 光量が足りず、細部は確認できない。しかし、体格や身に着けている和装は確かに柏陽のそれだ。 体からは、寝返りや身じろぎは当然のこと、呼吸のための上下運動も感じ取れない。 してみると、住人たちが「柏陽が死んでいる」と感じたのも至極尤もか。 サヤ お香使ったら、何が起こったか見られるかな? やっぱり、部屋に入れないと無理? 平太 それ思ったんだけど…入らないと無理なんじゃないかな。 サヤ だよね〜。部屋に出入りした人は分かるかもしれないけど。 WC 香炉は覗き窓から入れられるサイズですから、やってやれない事はないです。 平太 だったら、部屋の外で焚いた方がいいのか? 香炉を入れても取り出せないと意味無いしね。 サヤ 「へーたん、鍵ホントに開かないか確認しない?」 平太 「もちろんするよ!」 サヤ 「うん。お願いします。」 平太 じゃあ、「桐」「麦穂」「夕顔」「芍薬」「月下美人」の鍵をすべて試すよ。 WC だめだね。基本鍵穴に入らない。またはスカスカ。 平太 「柏陽が鍵を手に握ってるって言うのも、ホントかどうだかわからないよね。誰かが殺して持ってるかもしれないし。」 サヤ 「うん。まず柏陽さんかどうかもわかんないし。」 WC 中から鍵がかかってるからっている状況証拠だね。 まあ、真犯人が鍵持ってるのが順当ではある。 平太 「この屋敷で柏陽さんが死んで、柏陽さんの権利が手に入るのは誰だ? 『次』が決まるまで…『次』って誰だ?」 サヤ 「う〜ん。そのへんは共由さんにでも確認した方がいいかもね。」 平太 「そだね、確認しよう。」 サヤ 「蒼次郎さんは兄弟、詠歌さんが娘。ミハエルさんはその旦那さん…共由さんは…お母さんの代からの使用人…?」 平太 「共由さんも一応入ると思うよ。」 サヤ 「住んでいればいいんだっけ?」 平太 「ここに住んでいる人のひとりだもん。何らかの決まりの中で、使用人になったんじゃない? 確かルールの中にあったよね、『紅簾の間』への立ち入りが不可能な場合の決めごとが。」 WC ありましたね。 平太 「俺たちも巻き込まれてる気がするけど。」 WC たしか…ガ○ガリ君であたりを出したものが次の当主、だったね。 平太 そんな決め方かよ! サヤ 「う〜ん。ともかく、私は一旦外出てくるよ。」 平太 「俺は電話するよ、外は電波状態悪いみたいだから、頭を冷やして…部屋に戻ってから家に電話かけるよ。」 サヤ 「うん、そっか。」 平太 「さやねぇは連絡しなくていいんだっけ?」 サヤ 「う〜〜ん。した方がいいけど…。今連絡すると、帰りたくなっちゃいそ。」 平太 「そか。」 WC 旦那が助けに来ちゃうよ。 平太 好みの状況だし(笑)。 春乃介 「名探偵は遅れて現れる。(テーマ曲)」 サヤ そだね(笑)。 春乃介(?) 「 密室 ミステリ用語の1つ。 物理的または環境的に作られた「出入り不可能な空間」で事件が起きた場合、その「出入り不可能な空間」を「密室」と呼ぶ。 「密室殺人」と言えば、探偵ものの花形である。 だね! 密室やほーい!」 |
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| 平太
「もしもし?」
秋子 「ああ、へーた?」 WC おかんだよ。 平太 「うん、そだよ。」 秋子 「どう? 無事?」 平太 「うん、連絡遅くなってごめん。 無事なんだけど…仕事の方が決着つかなくて、まだ帰れてないんだ。で、よく考えたら、明日も休みだよね?」 秋子 「そうだね。」 平太 「だから、もうちょっと仕事してくるから、今日は帰れないです。」 秋子 「はいはい。気をつけてね。」 平太 「うん。また連絡するよ。」 今回は無事連絡が終わったと(笑)。 |
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| サヤ
サヤは外でリキの顔をわしわししてます。
「リーキ〜〜〜〜〜。」
リキ 「むふー。」 WC 変な顔。 サヤ 「あはは。かわい〜♪」 リキ 「わうッ!」 WC ふるふるふる… 逃げる。 サヤ ひどい〜。 WC リキはあぐあぐとサヤの手をまぐまぐしたり。 擬音過ぎてなんだかわからん。ニュアンスで。 そろそろ23時か。 平太 そのくらいになっちゃうか…。 サヤ もうそんな時間!? WC 8〜9時に帰ってきて、話して、考えて、飯食って、そんなもんじゃないかなと。 平太 うん、だね。 サヤ 私は地下から持って帰ってきた本の解読もしなきゃいけないっす。 平太 おっと…いろいろ時間が大変だね。 サヤ そですね〜。う〜〜〜〜ん。確か解読は3時間くらいかかるはずだから…。 WC ですね。大略で。 平太 ちびしいのー。 サヤ 睡眠不足でも、3日間くらい頑張れるよね? 能力下がったりする? WC 能力は下がらんです。よほど無理しなければ。4.5時間以上睡眠があれば。 サヤ う〜ん、紅廉の間も調べたいけど、日中に本の解読はもったいない気がするので、私は部屋にこもってしまっていい? 平太 うん、仕方ないね。じゃあ、オレは共由さんに話を聞くか。 サヤ お願いします! |
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