虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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長月館
 
【応接室】

WC  応接室。 やわらかい空気がある、今となってはこの館の中でも特異な場所と言えるかもしれない。

平太  「もうお香焚いちゃう?」

サヤ  「ちょっと待ってね。」
集中集中…。

WC  「何か」は確かにある。ただしそれは、戦いや災いと言ったものとは違う。 
誰かの幸せなシーンを垣間見る事は出来るかもしれない。

サヤ  「お香、どうしよっかな。なんだか、ちょっと違う雰囲気みたい。争ってた感じではないみたいだよ。」

平太  「でも、ここの『魔女』と言われる人たちの事を調べに来たんだよね…まあ、じゃ最後にする?お香が余ったら、で。」

サヤ  「うん。そうしようかな。」

WC  話し合ってた時間含めるから、部屋を回るなら2つOKだけど、お香までたくなら1箇所ね。

平太  それ越えたら、7時半に屋敷出る感じ?

WC  そうね。

平太  じゃあ、主人私室かな?

サヤ  行きましょう! 

 
【主人私室】

WC  主人私室。 静謐な死の匂いが満ちる。

平太  じゃあ、さやねぇにチェックお任せかな?

サヤ  はい。集中集中…。

WC  幾つか回った今ならわかる。 ここには確実に死のにおいがある。 
それは血の匂いではないが、たしかに、不吉な何かがある。

平太  俺もわかっていいの?

WC  サヤが喋ればねー。イタコ状態で。

平太  そか。

サヤ  イタコ状態でしゃべった〜。

平太  (笑)

WC  恐ろしい子ッ!

平太  「じゃあ、お香焚いちゃうよ。」

サヤ  「ちょっとまって、一応荷物用意する。」

平太  俺はもう移動しておいた。ボールはずして、身代わり2ついれた。

サヤ  私、やっぱり大量買い込みする。「実は」これも隠し持ってきてました。 
煮干し7本。「身代わりL」が4個。
「アタック3」を白×1、青×1、黒×1、黄色×2、赤×1。
「ヒーラー2」を5個。
これ 「アタック3」「ヒーラー2」共にアイテムの名前である。
「アタック」は攻撃アイテム、「ヒーラー」はLP回復アイテムの総称で、1〜4のランクがあり、数字が大きいほど威力(効果)が高い。
アイテムの形状は使い手に任せているが、サヤの場合、「アタック」は破魔札、「ヒーラー」は飲み薬のようである。
で所持金残り12000円。

平太  おー…財布が泣いておる…。

サヤ  で、「ヒーラー2」を2個と「アタック3」の白×1と黄色×1をへーたんに無理やり持たせる。

平太  うへー(笑)。

サヤ  で、ヒーラー1個は今自分で使うね。

WC  さいころふってねー。

サヤ  20点で満タン回復ね。

平太  「 アタック3 アイテムを所持する場合、アイテム毎に決まった「コスト」の総計が、使い手の「フリング」値以内に収まっていなければならない。
「アタック3」は、そのコストが大きいため、つまり、「重い」のである。
」重いよ。


サヤ  「身代わり使い切って、持てるものなくなったら使いなさい。さやねえからのお願い。」

平太  「はい…ありがとね。」

サヤ  私はお守りしまった。赤魔女たおしたから。

平太  そういう作戦か〜。でも、入れておく。

サヤ  うん、雑魚もいるので。

平太  これは「甲子園」にいけるように幼なじみがくれたお守り…のはず(笑)。

サヤ  あ〜、それは外せないですね。

WC  まあね。設定上。

サヤ  うん。まぁ、色々やってみるのがいいのでしょう、きっと。

平太  焚く?

サヤ  焚きましょ。

平太  お香を焚きました。 

 
WC  静かにただよう香の煙に、背が高くふくよかな女性の影が映る。1人だ。 
女性は、書架の前に立っている。そのまま腰をまげ、書架の右端を探るような仕草を見せ、何かを待つようにしばらく立ちつくす。 
そして、書架に「埋める」ように腕を差し出す。 
その「奥」から、本だろうか、四角の物体を取り出し、しずかに机につく。 しばらくページを繰る。
そして、深い、ため息をつく。

影は乱れ、違う時間を映し出す。 
ふくよかな女性が、机でペンを走らせている。 手紙、だろうか。 
何度か書き損じ、書き直し、しばらくして、書き上げた「それ」を封筒に入れて、部屋の壁に向かう。 
フックのある壁。鍵のかかっていた場所だ。 そこから「なにか」をとると、封筒に入れる。
フックは、今は何もかけられていないフックだ。 
ふたたび、机に戻る。 
そして、机の上にある小箱を開け、その中から取り出したカードを確認すると、カードに書いてあったことを封筒の表に書き写す。 
宛名、だろうか。 その後、少しだけ祈ると、部屋から出て行った。

再び、影が乱れる。 
女性は、立ちつくしている。 ずっと、立ち尽くしている。 
やがて。 ゆっくりと、ゆっくりと、小さな絵が掛けられた壁に近づく。 
絵を外し、その後ろの壁から何か小さなものを取り出す。 瓶だろうか。 
それを傾け、手のひらに何かを零す。 そして再び、立ち尽くす。 
女性は、手のひらに載せられた何かを口に含み…

影は、渦を巻くように乱れる。 
渦は、今までにない数の影を映し出す。 
床に横たわる影。 それを囲むように、立ちつくす4つの影。 老婆。 細身の女性。 髪を結い上げた女性。 少女。 
4人は、床に横たわる影を見つめ、ただ、ただ、立ち尽くしている。 立ち尽くしている。

香の煙が薄れてゆく。 
そして、かこのまぼろしはうつつになる。 
夢から覚めるように、煙は晴れる。 
部屋には、静謐な死の気配だけがある。

平太  「…服毒自殺?」

サヤ  「かな。たぶん。」

平太  「『永遠に続く魂の牢獄。相克の鎖に囚われ、解き放たれることのない翼。
渇望するのは、ただ一つ。終わりを。
ごめんなさい。』
…このメモの通りに絶望して? 
…5人だからよかったんだけど、4人になったから殺し合いをすることになったのかな?」

サヤ  「う〜ん。よくわかんない。
殺しあったから、比嘉ちゃんは強くなったんだよね。  
あのおばあさん(青魔女)がいたから、関係ないことはないよね。」

平太  「思ったことは…
5人でいたから良かったんだけど、5人でいるにはこの屋敷にずっと5人でいなければならなかった。
でも、外に出たい人がいて…その輪を崩した。
だから、殺し合わなきゃならなくなった? よくわかんないけど。
5人のどこか一人に力が偏っちゃって、バランスがとれなくなったとか…」

サヤ  「う〜ん、確かに『相克の鎖に囚われ』って書いてあるから、5人が属性が違うことでバランスはとれていたんだろうね。」

平太  「『永遠に続く魂の牢獄。
相克の鎖に囚われ、解き放たれることのない翼。
渇望するのは、ただ一つ。
終わりを。ごめんなさい。』
…この5人の関係を、ふくよかさんが終わらせたかった?」

サヤ  机の上に小箱ってある?

WC  あります。シンプルな、小物入れでしょうか。

サヤ  前来たときも調べたっけ?

平太  無いかな。

サヤ  開けてみていい? 私は封筒の送り先が気になるの。

WC  小箱には、何枚かの、カードが入っています。
殆どは英語で、前来たときに調べたかもしれないへーたには、日用品の一種にしか見えなかったのかもしれません。

サヤ  カード! それ。調べる。

WC  カードには、色々な住所、宛名が書いてあります。

サヤ  全部に住所書いてあるってこと?

WC  そうですね。名刺みたいなものを想像してもらえると良いでしょう。殆どは英語です。 
その中に、1枚だけ日本語のカードがあります。

サヤ  じゃ、とりあえず日本語はなんて書いてある? すぐ読めるはずだ。

WC  「吐月 柏陽」 そして、吐月館の住所。

サヤ  え〜! 
他のカードはすぐ読めないようなものばかり?

WC  ですねー。

サヤ  とりあえず日本の住所じゃないんだよね?

WC  ですねー。地名は読んでもわからんですよ。

サヤ  でも、国名が住所の最後にくるでしょ。

WC  アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスが主。

サヤ  「ねぇ、へーたん。これ…。」

平太  「うわ、あのじいさん、知らないとか言って、手紙のやりとりしてたって事?」

サヤ  「どういうことだろ? 
とにかく、あのふくよかさんは鍵がかけてあった所から『なにか』を封筒にいれて、このカードのどこかに送ってたよね。」

平太  鍵が掛かってた所のフックのモノを入れたから、鍵でも送ったか?

サヤ  そうかも。

平太  この屋敷のどこかの…

サヤ  「とりあえず、すぐ聞けるのは吐月の当主様だけだね。」

平太  「だね。これは帰って聞いてみるか…また待たされるのか…?」

サヤ  「でも、聞いてみよう。」

平太  「この住所突きつけるためにもってこうよ。『これでもくらえ!』って。」

サヤ  「うん、そだね♪」

平太  「もう遅いし、帰ろっか。」

サヤ  「5人の関係は、地下から持ってきた本を読めば、少しはわかるかもしれないし、一旦帰ろうね。」

平太  「うん。」 
 
【吐月館】

WC
  外に出れば7時過ぎ。 急いで山道を抜け、吐月館に。 8時半過ぎになるでしょうか。
やっとついた吐月館は、それでも人の気配を感じさせ、2人を安心させる。

平太  まあ、いいや。重要な方を終わらせよう。柏陽さんが寝る前に。

WC  しかし、呼び鈴に応え、扉を押し開いた共由の顔色は蒼白で。

平太  「ただいまー…どうしました?」

共由  「…ああ、お2人ですか。」

サヤ  「どうも遅くなりました。」

共由  「…いや、あの…」

WC  鋭い声が頭上から。

詠歌  「そいつらが犯人なんじゃないの!?」

WC  吹き抜けの2階。 吐月詠歌が2人を見下ろしている。

平太  「はいぃ?」

共由  「詠歌さん!」

WC  共由がとがめるような声を上げる。

サヤ  「どうしたんですか!?」

平太  「どういう事ですか? 俺たちはいま長月館から帰ってきたばかりですよ?」

共由  「ええ、その…御前が、お亡くなりになった様です。」  
 
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