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虚空の翼
◆2話 ◆ うつつにうつるはまぼろしの |
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| 長月館 | |||
【応接室】
WC
応接室。
やわらかい空気がある、今となってはこの館の中でも特異な場所と言えるかもしれない。
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【主人私室】
WC
主人私室。
静謐な死の匂いが満ちる。
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| WC
静かにただよう香の煙に、背が高くふくよかな女性の影が映る。1人だ。 女性は、書架の前に立っている。そのまま腰をまげ、書架の右端を探るような仕草を見せ、何かを待つようにしばらく立ちつくす。 そして、書架に「埋める」ように腕を差し出す。 その「奥」から、本だろうか、四角の物体を取り出し、しずかに机につく。 しばらくページを繰る。 そして、深い、ため息をつく。 影は乱れ、違う時間を映し出す。 ふくよかな女性が、机でペンを走らせている。 手紙、だろうか。 何度か書き損じ、書き直し、しばらくして、書き上げた「それ」を封筒に入れて、部屋の壁に向かう。 フックのある壁。鍵のかかっていた場所だ。 そこから「なにか」をとると、封筒に入れる。 フックは、今は何もかけられていないフックだ。 ふたたび、机に戻る。 そして、机の上にある小箱を開け、その中から取り出したカードを確認すると、カードに書いてあったことを封筒の表に書き写す。 宛名、だろうか。 その後、少しだけ祈ると、部屋から出て行った。 再び、影が乱れる。 女性は、立ちつくしている。 ずっと、立ち尽くしている。 やがて。 ゆっくりと、ゆっくりと、小さな絵が掛けられた壁に近づく。 絵を外し、その後ろの壁から何か小さなものを取り出す。 瓶だろうか。 それを傾け、手のひらに何かを零す。 そして再び、立ち尽くす。 女性は、手のひらに載せられた何かを口に含み… 影は、渦を巻くように乱れる。 渦は、今までにない数の影を映し出す。 床に横たわる影。 それを囲むように、立ちつくす4つの影。 老婆。 細身の女性。 髪を結い上げた女性。 少女。 4人は、床に横たわる影を見つめ、ただ、ただ、立ち尽くしている。 立ち尽くしている。 香の煙が薄れてゆく。 そして、かこのまぼろしはうつつになる。 夢から覚めるように、煙は晴れる。 部屋には、静謐な死の気配だけがある。 平太 「…服毒自殺?」 サヤ 「かな。たぶん。」 平太 「『永遠に続く魂の牢獄。相克の鎖に囚われ、解き放たれることのない翼。 渇望するのは、ただ一つ。終わりを。 ごめんなさい。』 …このメモの通りに絶望して? …5人だからよかったんだけど、4人になったから殺し合いをすることになったのかな?」 サヤ 「う〜ん。よくわかんない。 殺しあったから、比嘉ちゃんは強くなったんだよね。 あのおばあさん(青魔女)がいたから、関係ないことはないよね。」 平太 「思ったことは… 5人でいたから良かったんだけど、5人でいるにはこの屋敷にずっと5人でいなければならなかった。 でも、外に出たい人がいて…その輪を崩した。 だから、殺し合わなきゃならなくなった? よくわかんないけど。 5人のどこか一人に力が偏っちゃって、バランスがとれなくなったとか…」 サヤ 「う〜ん、確かに『相克の鎖に囚われ』って書いてあるから、5人が属性が違うことでバランスはとれていたんだろうね。」 平太 「『永遠に続く魂の牢獄。 相克の鎖に囚われ、解き放たれることのない翼。 渇望するのは、ただ一つ。 終わりを。ごめんなさい。』 …この5人の関係を、ふくよかさんが終わらせたかった?」 サヤ 机の上に小箱ってある? WC あります。シンプルな、小物入れでしょうか。 サヤ 前来たときも調べたっけ? 平太 無いかな。 サヤ 開けてみていい? 私は封筒の送り先が気になるの。 WC 小箱には、何枚かの、カードが入っています。 殆どは英語で、前来たときに調べたかもしれないへーたには、日用品の一種にしか見えなかったのかもしれません。 サヤ カード! それ。調べる。 WC カードには、色々な住所、宛名が書いてあります。 サヤ 全部に住所書いてあるってこと? WC そうですね。名刺みたいなものを想像してもらえると良いでしょう。殆どは英語です。 その中に、1枚だけ日本語のカードがあります。 サヤ じゃ、とりあえず日本語はなんて書いてある? すぐ読めるはずだ。 WC 「吐月 柏陽」 そして、吐月館の住所。 サヤ え〜! 他のカードはすぐ読めないようなものばかり? WC ですねー。 サヤ とりあえず日本の住所じゃないんだよね? WC ですねー。地名は読んでもわからんですよ。 サヤ でも、国名が住所の最後にくるでしょ。 WC アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスが主。 サヤ 「ねぇ、へーたん。これ…。」 平太 「うわ、あのじいさん、知らないとか言って、手紙のやりとりしてたって事?」 サヤ 「どういうことだろ? とにかく、あのふくよかさんは鍵がかけてあった所から『なにか』を封筒にいれて、このカードのどこかに送ってたよね。」 平太 鍵が掛かってた所のフックのモノを入れたから、鍵でも送ったか? サヤ そうかも。 平太 この屋敷のどこかの… サヤ 「とりあえず、すぐ聞けるのは吐月の当主様だけだね。」 平太 「だね。これは帰って聞いてみるか…また待たされるのか…?」 サヤ 「でも、聞いてみよう。」 平太 「この住所突きつけるためにもってこうよ。『これでもくらえ!』って。」 サヤ 「うん、そだね♪」 平太 「もう遅いし、帰ろっか。」 サヤ 「5人の関係は、地下から持ってきた本を読めば、少しはわかるかもしれないし、一旦帰ろうね。」 平太 「うん。」 |
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| 【吐月館】 WC 外に出れば7時過ぎ。 急いで山道を抜け、吐月館に。 8時半過ぎになるでしょうか。 やっとついた吐月館は、それでも人の気配を感じさせ、2人を安心させる。 平太 まあ、いいや。重要な方を終わらせよう。柏陽さんが寝る前に。 WC しかし、呼び鈴に応え、扉を押し開いた共由の顔色は蒼白で。 平太 「ただいまー…どうしました?」 共由 「…ああ、お2人ですか。」 サヤ 「どうも遅くなりました。」 共由 「…いや、あの…」 WC 鋭い声が頭上から。 詠歌 「そいつらが犯人なんじゃないの!?」 WC 吹き抜けの2階。 吐月詠歌が2人を見下ろしている。 平太 「はいぃ?」 共由 「詠歌さん!」 WC 共由がとがめるような声を上げる。 サヤ 「どうしたんですか!?」 平太 「どういう事ですか? 俺たちはいま長月館から帰ってきたばかりですよ?」 共由 「ええ、その…御前が、お亡くなりになった様です。」 |
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