虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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隠し部屋
 
平太  一応、共由さんは連れて行かなきゃいけないんだよね。

WC  蒼次郎の意向を考えるとそうですね。

平太  まあ、蒼次郎さんに見つからなければ。

サヤ  行って確かめよか。

平太  柏陽さんの部屋。

WC  では、吹き抜けを挟んで対角側。ドアは閉まっている。鍵がかかっているようだ。

サヤ  「えーっと。」

平太  じゃあ、共由さんに借りに行こう。

サヤ  そですね。どこにいるかな。

平太  厨房とか、部屋とか探します。

サヤ  とりあえず厨房かな?

平太  おけー。

WC  ウロウロしていれば、厨房の方から炊煙の気配がある。 
覗いてみれば、エプロンをつけた共由が立ち働いている。

平太  「共由さんすいません。」

共由  「はい?」

WC  手を止めて振り向く。

平太  「蒼次郎さんと詠歌さんの許可がいただけたので。」

共由  「ああ。調べてみますか。」

平太  「はい、で、蒼次郎さんは共由さんと一緒ならって言ってましたけど…時間ありますか?」

WC  厨房の片隅、壁に付けられたボードを探り、一本の鍵を取る。

共由  「かまいませんよ。少しだけ、待ってもらえますか?」

平太  「すいません。」

サヤ  「はい。」

WC  と、火やらなにやらの簡単な始末をする。

詠歌  「はい、良いですよ。」

サヤ  「では、お願いします。」
とことこ、3人で向かいますか。 
 
【主人私室】

WC  共由とともに2階へ。共由は部屋の鍵を開ける。

共由  「どうぞ。」

サヤ  「ありがとうございます。」

平太  「失礼します。」

WC  純、とまではいかないが、和風の調度でまとめられた部屋だ。 落ち着いた、渋い雰囲気で、簡素に片付いている。
ベッド、文机、箪笥、衣紋掛などが目に付くだろうか。

平太  まずは「鍵」だね。長月みたいに鍵を掛ける所ありそう?

WC  あるね。2つのフックがあるが、何もかかっていないよ。

サヤ  机はどうでしょ?

平太  あとは、手紙がまとめておいてある所か。

WC  引き出しのない文机は、硯と筆などが置かれており、それ以外に目立つものはない。 
書いたもの、あるいはそれをしまう場所は見当たらない。

サヤ  では、仕方ない。箪笥をごそごそしますか。

WC  箪笥は、階段状の和箪笥だ。ちょっと、老年にかかる男性の1人部屋には似つかわしくない。
中には衣類や小物などが納められているだけだ。

平太  「共由さん、隣の部屋ってなにか使ってますか?」

共由  「隣ですか? 空き部屋です。」

平太  「はい、まったく使われて無いですか?」

共由  「御前の奥方が存命の頃はそちらを使われていたようですが。30年ほど前に亡くなられてから、ずっと空き部屋です。」

平太  「そうですか、そっちにしまうって事も無いか。」
階段ダンスの上の天井気にしてみる。天井まで届きそう?

WC  届くね。

平太  共由さんがいてやるべきかどうか…
どうする、さやねぇ? 午後なら、みんなが話し合ってるときにできるけど。

サヤ  別にいいと思うよ。やっちゃお。

平太  じゃあ、登っちゃうよ。靴脱いで階段箪笥登るね。

WC  最上段に上ると、天井までの高さは、へーたが軽く腰を屈める程度の高さだ。
共由は驚いたように見ているが。

平太  天井近くまで行って、押してみるよ。

サヤ  お願いします。

WC  羽目板の一枚が、カタリと、ずれる。

平太  「ビンゴか…」
顔を入れてみるよ。

WC  羽目板を外すと、50cm四方程度の穴が天井に開く。 
すぐに上の部屋、という訳ではないようで、まずはコンクリの床板が、そこそこの厚さになっている。 
背伸びして、伸ばした鼻先がやっと「上」の部屋に出る。 
下からの明かりにぼんやりと、下と同じくらいのサイズの部屋に見える。

平太  片手で登れるのか?(笑)

サヤ  あわわ。

WC  片手では無理だと思うな。

平太  「ちょっとむり! さやねぇ交代! おれライト持ってくるよ。」

サヤ  「私の身長でいけるかな。」

WC  サヤでは身長と腕力が足りないようだ。

平太  ダメなら体かすよ。柏陽さんって身長どのくらいだっけ?

WC  サヤと変わらない。

平太  「なんか登る足場ありそう?」

サヤ  「どうだろ??」

平太  「探してみて。」

サヤ  探してみた。壁?というか穴?というかコンクリの床板とかその辺いったい。

WC  いっぱいに伸ばした腕の先で、ぎりぎり見えない床を探ると、手の先に、丸い棒のようなものが当たる。 引っ張ると動く。

サヤ  え〜、じゃあ、引っ張ります。

WC  ずるずると音がして、穴の上に木組みのHが顔を出す。短い梯子のようだ。

サヤ  お、良かった。

平太  「じゃあ、おれライト持ってくる。」

サヤ  「あ、そっか。おねがい。」

WC  では、引っ張り下ろした梯子を箪笥の上にかけると、丁度上階に行けるようだ。

共由  「これは…驚きました。こんな風になっていたんですね…。」

平太  「うん、オレも驚き。」

サヤ  「お手柄だね、へーたん♪」

平太  「いや、まぐれまぐれ。」

サヤ  じゃ、上りましょ〜。2人とも?

平太  「はしごならいけるかな…。」

サヤ  「うん、たぶん。」

平太  じゃあ、オレも登るよ。

 
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