虚空の翼

◆2話 ◆

うつつにうつるはまぼろしの
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隠し部屋
 
サヤ  では、サヤの部屋で、ごそごそ。中身確認。

WC  朝顔の木札がついた鍵が手のひらにすべり出てくる。

平太  げっち!

サヤ  「やったね!」

平太  すぐ隠そう!

サヤ  うん。では鍵はへーたんに預けますね〜。

平太  おけー。

サヤ  英文リトライはまだかな?

WC  良いよ。

サヤ  よっし。ケアフルで8でた。もったいない。12でした。

平太  うしうし。

WC  例によって要旨を。 

・「私」は、最近少しだけ悩んでいる。 
・「私たち」は「存在」しなければならないが、それによって犠牲を強いられるものが多い。
「私たち」の存在を、犠牲なしで成り立たせることは出来ないか。
完結した環の、完結しているがゆえの歪み。

平太  大丈夫! 運気上昇中にちがいない!

WC  悩み事を、具体性を持たせずに書いている感じ。 
自分の恋愛相談を、「知り合いの子がいるんだけどね」と。そんなイメージ。

平太  親しかったぽいよね。

WC  しかし、途中で、「お願いがあります」的な文章に変わる。 

・悩みを解決するために、少しだけ、無茶な方法をとる。 
・失敗したときの保険として、預けたいものがある。 
そして、「友情の誼で」、お願いを聞いて欲しい、と結んでいる。

サヤ  「う〜ん。具体的にはっきりとは書かれてないね。でも、ふくよかさんが書いたのは間違いなさそうね。」

平太  「消印はどうなってる?」

WC  消印はかすれて読めない。

平太  古いからかな?

サヤ  差出人の名前ないって言ってたけど、手紙にも名前ない?

WC  ないね。消印にせよ、宛名にせよ、古さもあるが、かすれてたりもする。

平太  まあ、あの部屋に託すモノがあるんだろうね。

サヤ  託すものって鍵のことじゃないの?

WC  普通に考えたら、手紙に鍵が同封されていたんだから、鍵だわな。

平太  いや、封筒に入らない『託すモノ』があるんだと思うけど。
古い手紙だったとして、柏陽がなぜお願いを聞かなかったのかも気になるよね。

サヤ  柏陽さん、お願いとして鍵預かって、そのまま誰にも渡さずに保管し続けることで、お願いを聞いてたんじゃないかと思ったんだけど。

平太  ああ、そういう事か。何かあったときの、対処するモノが部屋にあるって言うのがオレの考えだけどね。

サヤ  あぁ、長月の?

平太  そそ。対比嘉由良の兵器…対魔女用細菌兵器か何かが。

サヤ  ではでは、後で行ってみましょうか! ただ、外出してホントにこっちの屋敷は大丈夫か心配なんですけど。

平太  屋敷はみんなで話し合っている限りは大丈夫な気がするけどね。ダメなら、バトルロイヤル。

サヤ  話し合いで済んでれば、いいけど。帰ってきたら、血の海とかになってたらやだな〜。

平太  まあ、行ってみるか!

サヤ  そうだね!

平太  というわけで、午後を待ちます。

サヤ  お昼ごはんは済ませちゃいましょう。 
「あ〜、そういえば詠歌さんにあの写真の事聞いたら、危険かなぁ? 何か覚えてるかもしれないよね。」

平太  「でも、今回の話し合いに影響するんじゃない?」

サヤ  「うん…、そうだよね。話し合いが終わってからの方がいいかな。」

平太  「うーん…微妙。」
結局さ、俺たちは何がしたいのかが微妙。魔女の事だけ調べるなら、このまま行ってもいいし。

サヤ  うん、確かに。当主は誰になろうが、別にどうでもいいし。

平太  でも、この状況が気に入らないのは気に入らない。

サヤ  うん、そうね〜。あとは結局魔女がらみにもなりそうな気がするし。

平太  鍵をちゃんと借りてから、屋敷に行くのが道理かな。だったら、最後まで付き合うか。 
とりあえず、犯人を屋敷の住人に絞って徹底的に探し出そう。どうも、すっきりしない。 
鍵を開けても、吐月の問題が解決しそうに無いんだよね。

サヤ  う〜ん…、そこなんですよ!

平太  扉の奥は、魔女の話に関係あるだけだと思うし。

サヤ  吐月だけで解決できるなら、吐月館を離れたくないけど、吐月だけで犯人探しできる気にならない。
状況証拠ばっかりで、実際死因とかもわかんないし。

平太  時間はかかりそうだよね。

サヤ  だれが嘘ついててもおかしくないし。

WC  状況証拠すらないとも言う(笑)。

サヤ  だから、長月を調べる事で何かこっちへのつながりも見えるといいなぁ、と思ってたのですよ。目的が逆になっちゃってるけど。

平太  おれもそうなんだけど…なんかいやな予感がする方が大きい。

サヤ  そうですね〜、私も。何も起こらない気がしない。じゃあもー、突っ走ろうよ。

平太  たぶん、長月にいけば終わりそう(笑)。

サヤ  うん。この屋敷はとりあえず、話し合いしてる間は大丈夫、ということで。

平太  とりあえず、当主が決まればいいなら、やっぱり写真が決め手になるんじゃない?

WC  なんで?

平太  決め手にはならんか。要因ぐらいか? 選択肢が増えるぐらいか。

WC  揉め事のな。

平太  ていうか、これミハエル知ってたよな。絶対。

サヤ  一番近いとかなんとか。

平太  この写真自体隠されてたって認識でいいの?

サヤ  まぁ、あの隠された部屋にあったから…とは思うけど。

平太  じゃあ、どういうことだ? なんで知ってるの? 想像?

サヤ  詠歌さんからとか?

平太  じゃあ、みんな知ってそうじゃない? 詠歌さんが知ってるなら。

WC  「きっとそうだろうと思う」と、「そうである」は大きく違うがね。

平太  それが殺す要因になる?…時期当主って世襲制かもわかってないや。

サヤ  やっぱり、共由さんにさっき『ようた』のこと聞いてみれば良かったか…。失敗。

平太  蒼次郎さんかな一番いいの。第一発見者であやしいけど…古いから昔のこと知ってそう。

サヤ  という意味では、私はやっぱり詠歌さんの方が、実際に記憶にあるかな〜とか思ったんだけど。

平太  すぐにはわからないと思う。

サヤ  あっ、そういえば、小学生の時だっけ? あんま、覚えてないか。

WC  あ、ちなみに、同じ年頃の二人が一緒に映ってる写真はないですよ。2人の年齢全然違うので。 それぞれの、写真です。

サヤ  2人ともサヤより年上だったよね。

WC  うん、年上。共由はちょっぴり。詠歌は結構。

サヤ  一緒に写ってるんだとばっかり思ってた。

WC  一緒にあっただけ。写ってるのは個人で。

サヤ  んじゃ、詠歌さんにこだわることないや。では、蒼次郎さんに聞いてみましょっか? まだ、話し合いに入ってなければ。

WC  2人は自室(?)で昼飯、で良いのかな?

サヤ  良いですよ〜。

平太  いいよ。

WC  じゃあ、トレイを下げに来た共由が。

共由  「もうすぐ、話し合いが始まります。ご不便おかけしますが、サルーン以外は自由に使っていただいてかまいませんので。」

WC  と、言って、出てゆく。

サヤ  「あっ、共由さ〜ん。」

共由  「はい。」

サヤ  「蒼次郎さんて今どこにいるかご存知ですか?」

共由  「サンルームです。今日の分の仕事を必死でやってらっしゃいますよ。」

サヤ  「わかりました。ありがとうございます。うぅ、ちょっと話しかけに行きづらい状況?」

平太  「でも、ここは行かないとね。」

サヤ  「うん。」
ではでは、サンルームへ。 
 
WC  サンルーム。 蒼次郎が、PCや書類を片付けている。

サヤ  「あ〜、蒼次郎さん、忙しいところ申し訳ありません。」

蒼次郎  「ああ、いえ。今度は何かな。」

サヤ  「あの…、ちょっとお聞きしたいんですけど。」

蒼次郎  「どうぞ。」

サヤ  「この写真、ちょっと見ていただけます?」

蒼次郎  「…懐かしいな。共由じゃないか。どこでこんなものを。」

サヤ  「ええまぁ、これって共由さん…ですよね? この頃の事覚えてらっしゃいます?」

蒼次郎  「ええ。ずいぶん前です。まだ由(ゆう)さんが存命だった頃ですね。」

サヤ  「由さん?ってどなたですか?」

蒼次郎  「共由の母ですよ。鳴海・由(なるみ・ゆう)。使用人でした。」

サヤ  「あ〜、そうだったんですね。」

蒼次郎  「働き者で、小綺麗な人でしたね。共由が中学に入る前に他界しましたが。」

サヤ  「へぇ、じゃぁ共由さんもお母さん譲りなんですね〜! 働き者って感じです。」

蒼次郎  「そうですな。よく似ている。」

サヤ  「ちなみに…、裏面も見ていただけますか?」

蒼次郎  「…ようた、か。…全く。」

サヤ  「ええ。これって、この子の名前かと思いましたが、違いますか?」

蒼次郎  「繰り返しますが。どこでこれを?」

サヤ  「(言っちゃっていいよね?)」

平太  「これは、午前中に柏陽さんの部屋で見つけました。詠歌さんの写真に混じってですよ。」

蒼次郎  「やれやれ…兄はどうもこういうところが子供っぽくていけない。 本名ですよ。共由の。鳴海・陽太。」

平太  「柏陽さんの、陽ですね。」

蒼次郎  「そうですな。」

平太  「なにより聞きたいのは、これが隠してあったことです。これを隠す意味があるんですか?」

蒼次郎  「さあ?」

平太  「この屋敷と関係があるんじゃ無いですか?」

蒼次郎  「それは、隠した本人にしかわかりませんな。 
鳴海陽太という人間がいる。それを可愛がった、吐月柏陽という人間がいる。 事実はこれだけです。」

平太  「この屋敷の時期当主は、世襲制であるということは? 男で無ければいけないと言うことは無いですか?」

蒼次郎  「全くありませんね。まあ、女性には色々と不便がある時代が多かったですからな、多くは男性でしたが。」

サヤ  「いつから、『共由』という名前になったんですか?」

蒼次郎  「生まれた時からですよ。共由自身、由さんくらいにしか呼ばれていなかったはずです。陽太という名はね。」

サヤ  「じゃあ、本人は知ってるんですか?」

蒼次郎  「さあ。聞いた事はありませんな。『陽太』が本名であるということは知っているはずですが。」

サヤ  「でも、きっと気づいてるでしょうね。  さっきこの写真を共由さんも見てしまってますから。柏陽さんの部屋で。」

蒼次郎  「うすうすは判っていたでしょう。ここでは公然の秘密でしたから。」

平太  「ミハエルさんが言ってましたよ、共由さんは次期当主に一番近いようなことを。近いんですか?」

蒼次郎  「彼も、私も、詠歌もね。同じ位には。」

サヤ  「ねぇ、蒼次郎さん。この後の話し合いってどうなると思いますか?」

蒼次郎  「どうなるでしょうな。私が聞きたいくらいですよ。 
私にとっては、正しい意思と力の使い方が出来るものなら、当主など、誰でも良いのです。 
そう考えないものもいて、正しい意思を持たないものもいる。 どうなることやら…」

平太  「ミハエルさんを気にしていたのはなぜです? ミハエルさんは、吐月のこの力が欲しくて来たと思ってるんじゃないですか?」

蒼次郎  「君が彼と話して感じたことを私も感じるからだよ。
その『感じ』方と、その受け取り方には違いがあるかもしれないがね。」

サヤ  「私には…、よくわからないんですけど。何かありそうなの?」

蒼次郎  「さて、そろそろ良いですかな? 最年長が遅刻では、様にならない。」

平太  「ぶっちゃけ、ここの住人で柏陽さんを殺したい人はいたんですか。」

蒼次郎  「さあね。きっといただろう。いなかったかもしれない。少なくとも、聞いた事はないな。」

平太  「あなたからは、そう感じないのがオレのあなたから『感じ』たことです。」

蒼次郎  「どうかな。君が君の感じ方を信じるか、疑うかも、君の自由だ。では…」

WC  と、腰を上げる。

蒼次郎  「長くかかると思う。失礼。」

WC  と、会釈して歩いてゆく。

サヤ  「世襲制でないなら、話し合いはなかなかまとまらないと思います。 
でも皆さん、冷静に、感情的にならずに、傷つけあうことにならないよう、祈ってます。 難しいでしょうけど…。」

WC  背中から「わかってるよ」とでも言いたげな苦笑の気配が。 
振り向かず、軽く手を上げて階下に消える。

サヤ  「ふぅ。あっさり答えてくれたね。」

平太  「結局、この写真なんで隠してあったのか、わからないね。紅簾の間行ってみる? ここまで来たし。」

サヤ  「うん、そだね。柏陽さんにしか分からないのかもね…。 そね〜、行ってみよ。」 
 
WC  紅簾の間、前廊下。

サヤ  「中の様子は変わりないかなぁ?」

WC  外の気温とは別にひんやりした場所だ。 中に倒れている柏陽らしき人物にも変化はない。
灯明が切れたのか、中の光の具合が異なるくらいか。

平太  「この場所でお香焚いてみる?」 あと、2個しか無いけど…無理なんだっけ?

WC  無理じゃないけど、あたりを引ける確率はきわめて低い。

サヤ  いろんな人が出入りしているから、大変ってこと?

WC  そうね。過去から現在まで。いろいろなことが起こりすぎてる。廊下もたぶん意味ない。
せめて、柏陽らしき人物の遺体の前でなら。

平太  隠し部屋はどうだろ? 意味ないか。一人でいるだけだもんな。

サヤ  いやぁ、私も入ったときに少し思ったけど…。もう鍵もないしね。

WC  少なくとも今日の午後はないね。

平太  待ってるのはあれだから、長月行くか。

サヤ  そうだね。

WC  では、そのまま移動で?

平太  だね、そのまま移動。

サヤ  うん、荷物持ってね。

平太  ああ、それ重要。 
 
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